【11月24日付社説】双葉郡の医療再生/行政が道筋示して後押しを

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 東京電力福島第1原発事故で避難を強いられた双葉郡の町村で、住民帰還の条件の一つに挙げられるのが、医療の再建だ。

 ただ、病院側にとっては、住民が戻らなければ、診療再開が見通せないとの意向があることが、県の調査で明らかになった。

 帰還後の住民が暮らしを立て直すためには適切な医療を提供する体制を整えることが重要だ。そのための道筋を、行政が具体的に示す必要がある。

 県の調査は、原発事故後に休業した双葉郡内の医療機関を対象に今後5年間での診療再開の意向を聞いた。公立・民間の病院や医科診療所、歯科診療所計70施設のうち35施設が回答した。

 地元で「再開する」との病院、診療所は6施設にとどまり、最も多かったのは「条件が整えば再開したい」との意向で、全体の4割の14施設が回答した。このうち再開の「条件」を複数回答で聞いたところ、13施設が挙げたのが「住民帰還」だった。

 回答した病院・診療所には、住民帰還が進まないと経営的に成り立たないとの見方があるようだ。入院や手術が可能な2次医療体制を整えるためには「民の力では限界。官の力で体制づくりが不可欠」との意見も寄せられた。

 双葉郡の医療機関に対する意向調査は初めてで、県は双葉郡8町村や国、医療関係団体が参加した双葉郡の医療体制を考える検討会で結果を示した。

 双葉郡の町村にとっては、医療体制の整備は住民帰還の実現を左右する大きな課題だ。

 検討会では、町村側からも、医療体制の整備の必要性や医師・看護師不足の深刻さを指摘する声が上がり、国に支援強化を求める意見が相次いだ。

 国は帰還困難区域を除く避難区域について2017年3月までに避難指示を解除する方針でいる。帰還を見据えた住民の意向と、診療再開への病院側の意向の双方をくむためには、国や県の公的支援策が急務といえよう。

 県は双葉郡の医療機関が帰還して診療を再開する場合、施設整備費などを補助する制度を設けているが、本年度末が適用期限になる。国は制度の延長に応えるべきだ。

 病院側の自助努力も求められるが、意向調査を踏まえれば、公的な医療機関を含めた施設の広域配置も検討が必要だろう。

 帰還住民の生活再建を支えるためには医療機関に限らず、商業施設や事業所の再開を後押しすることも必要だ。暮らしに関わる多面的な復興施策の展開を求めたい。