【11月26日付社説】福島大に農学系/人材育み農業の将来支えよ

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 専門の人材を養成し、研究成果を地域に役立てるという大学の使命を、農業分野でも十二分に発揮してほしい。

 福島大は東北6県の中で唯一県内になかった大学の農学系学部を、早ければ2018(平成30)年度に開設すると表明した。

 本県の農業は、東京電力福島第1原発事故で大きな痛手を負った。放射性物質対策や風評への対応など、事故の影響は今後も続くとみられる。

 原発事故後、県内の農業団体や経済界などから、福島大に農業の復興再生を担う人材養成が求められてきた。

 農学部を持つ他県の大学の研究者らが県内各地で農業分野の復興支援を担ってきた経緯もあり、地域や農家から大学や研究者に寄せられる期待も大きい。

 福島大の新学部開設は、原発事故を契機とした地域の要望に応えるものだ。

 学部開設を受け地域や経済界、行政にはあらためて農業を、本県の発展を支える重要な基幹産業と位置付け、時代に合った産業形態に育てていくことが重要になる。

 明治から大正にかけ、県内では生糸の取引を中心とした商業が産業をけん引してきた。当時、全国に開設された高等教育機関の誘致に際しても、県内では商工系の学校を求める声が強かったという。

 農業教育の変遷をみると、戦前から戦後にかけて個々の農家の生業を支えるための担い手育成に力が向けられてきた。

 ただ、いまの農業形態は大きな転換点を迎えている。原発事故の復興再生に加え、環太平洋連携協定(TPP)への対応が差し迫る。農家の高齢化や担い手不足といった構造的な問題も横たわる。

 農業の在り方が問われ、企業経営的な発想の必要性が指摘されている。一方、生産から流通、販売を手掛ける6次化の取り組みや観光産業との融合など農業に新たな価値を付加する動きも出てきた。

 生物化学やバイオ技術の導入も進み、若者が農業を職業として選択する可能性も広がってきた。

 福島大が実施したアンケートの結果では、農学系学部を設置した場合、卒業生を採用したい意向を示した県内の企業や自治体が回答の5割を超えた。高校生の進学先としても有望との見方が多い。

 福島大は今後、新設する農学系学部の在り方を検討し、どのような人材養成を目指すのかといった詳細な中身を詰める考えだ。

 厳しい環境にある本県農業の将来を見据え、地域の期待に応える農学系学部に育ててもらいたい。