【11月27日付社説】TPP対策大綱/「攻守戦略」強化の出発点に

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 政府が環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意を受けて、国内対策の指針となる大綱をまとめた。

 大綱はあくまでスタートだ。政府はTPPの今後の展開に合わせて対策を検証し、より有効な策を講じていかなければならない。

 大綱は、コメや牛・豚肉など価格下落や競争激化の恐れがある農業分野で新たな所得安定策を盛り込む一方、中堅・中小企業にもTPPの恩恵が及ぶよう後押しする考えを強調した。

 政府がこのタイミングで大綱を作成した狙いの一つは、TPPに対する不安の沈静化にある。TPP特有の秘密交渉のため、国民は10月の大筋合意まで内容を知ることができなかった。

 そのふたが開くと、特に農林水産物では8割で関税が撤廃されたり、撤廃されないまでも税率が大幅に引き下げられたりで、厳しい競争にさらされることが明らかとなり、生産者に不安が広がった。

 その点で、大綱がコメなど一部農業分野の保護に力点を置き具体的なのはうなずける。しかし、農業の体質強化を図るためには、攻守そろった戦略が欠かせないことを銘記すべきだ。

 TPPは発効後、10年以上にわたり段階的に各分野へ影響が広がっていく見通しだ。であれば大綱が先々まで基本的に変わらないとするのは不自然だ。効果が表れない対策については、見直しや中止など、その対策に費やす財政負担とともに考えなければならない。

 検証が不可欠なのは、日本が過去に大きな失敗を経験しているからだ。約20年前に合意した関税貿易一般協定(ガッ卜)ウルグアイ・ラウンドの際には、6兆円規模の対策が講じられたが、かなりの部分が公共事業だった。中には温泉施設まで含まれ、目的とした国内農業の体質強化にはつながらなかったとの評価が定着している。

 同じ過ちをTPPで繰り返すようなことがあってはならないし、それは国の借金が1000兆円を超える主要国最悪の財政面からも許されることではない。

 政府、与党ともに「農業の成長産業化」を進める戦略などは、今後も議論を続け、2016年秋にまとめる方針という。

 生産現場の不安と懸念を拭い去り、将来への意欲を後押しするために必要な施策はどんなものか。優先度を見極めながら知恵を絞り抜いてもらいたい。

 地方の経済にも目配りが欠かせない。大綱ではめぼしい具体策が見当たらずTPPが地方活性化につながるかどうか不透明だ。活性化への道筋を明確に示すべきだ。