【12月4日付社説】県産材の有効活用/再エネ先進県へ実用化急げ

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 林業振興と再生可能エネルギー生産の両方を進展させる事業だ。早期の実用化を目指してほしい。

 県は、国立研究開発法人・森林総合研究所と連携して、木材を発酵させてメタンガスを取り出し、エネルギーとして活用する新しい技術の実用化に向けた実証事業に乗り出す。

 事業は、「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」の中で、県産材を使った新たな需要創出プロジェクトの一つとして位置付けられる。

 新技術は同研究所が開発した。原料となる木材に放射性物質が付いていても、取り出されるメタンガスには放射性物質は含まれないという。ガスを取り出した後の木材の容積は、処理前の10分の1まで小さくなることから減容化にもなる。実用化を急ぎ、原発事故で被災した双葉郡を中心にした林業再生の加速化に役立てたい。

 身近なエネルギーとして一般家庭で使われている都市ガスの成分は9割以上がメタンガスで占めている。同研究所は国内に豊富にある木材資源を活用してメタンガスを作るための研究を進めてきた。

 同研究所によると、木材の細胞壁は構造が強固で微生物が分解できないため、これまでは木材からメタンガスを取り出すことは不可能とされてきた。

 しかし同研究所は、小さなビーズ玉を高速で回転させて木材を細かく砕くと同時に、酵素の力で細胞壁を分解する新しい技術の開発に成功し、メタンガスが取り出せるようになった。

 県は、同研究所との実証事業によって実用化を目指す。本県は、県土の7割を森林が占める。実用化されれば、双葉郡にとどまらず、県内全域での林業振興と活性化に向けた事業展開が期待できる。

 県は12月補正予算案に事業費を計上、メタンガスを作り出す実証プラントの設計に着手する。来年度以降は実証プラントを設けて新技術の確認と実用化に向けた試験を行う。試験には日本で最も多く植栽されているスギを使用する。

 今回の事業は生物資源(バイオマス)をエネルギーに有効利用する取り組みだ。取り出したメタンガスは熱源としての活用が見込まれているが、ガスは発電システムへの利用も可能であり、消費電力の全てを県内で賄う将来目標への貢献も見込まれる。

 急速に普及が進む太陽光だけでなく、バイオマスや風力、地熱、雪氷熱、温度差熱など、県内で生産可能なエネルギーを掘り起こして実用化を進め、再生可能エネルギーの先進県を目指したい。