【12月13日付社説】あかつき軌道入り/宇宙科学への関心高めたい 

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 「明けの明星、宵の明星」としてなじみ深い金星。明るさは1等星の約160倍と、空に浮かぶ天体の中で太陽と月に次ぐ。地球とは大きさや重力がほぼ同じだが、大気の成分や動きは全く違い、謎の多い惑星だ。

 日本初の金星探査機「あかつき」がついに金星の周回軌道に入った。卜ラブルからの復活は小惑星探査機「はやぶさ」を思い起こさせる。関係者の健闘をたたえたい。次は「科学観測」。科学者の挑戦に期待が高まる。

 金星探査の歴史は割と古い。1960年代以降、米国や旧ソ連が探査機を飛ばし、地面の様子、大気の成分や動きはかなり分かった。金星の大気のほとんどは二酸化炭素(CO2)。そこに硫酸の濃い雲がかかっている。

 しかし大きな謎が残っている。金星はゆっくり自転しているのに、大気は秒速100メートルという猛スピードで金星を回る。普通なら大気の粘性や地面との摩擦で遅くなる。何が大気を動かしているか、という謎だ。

 地球の進化に関わる謎もある。金星はCO2による温室効果のため、地表の気温が500度近い。一方、地球の大気にもかつては大量のCO2があったと考えられている。何が二つの惑星のその後を決めたのか。

 こうした謎の解決を目指し、あかつきは金星の上空から5台の特殊カメラで大気の動きを細かく調ベる。昨年、運用を終えた欧州宇宙機関(ESA)の探査機が見つけたとされる火山活動の実態を明らかにできる可能性もある。

 当初予定していた高度までは近づけず、既に設計寿命の4年半を超えたという不安材料もあるが、来春からの本格的な観測に大いに期待したい。

 日本の惑星探査は、今回が初めてとなる。1998年に打ち上げられた火星探査機「のぞみ」は機器の卜ラブルのため、火星まで約千キロに到達しながら、周回軌道に入ることができなかった。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は来年度、ESAと共同で水星探査機を打ち上げる予定で、将来は火星や月の探査も検討している。問題なのは、日本の政策の中で宇宙科学の位置付けが低く、基盤が弱いことだ。

 政府は今月、米国の提案に乗り、国際宇宙ステーションの2024年までの運用に参加を決めたが、かかる費用の割にはステーションでの実験は科学の成果に乏しい。日本の実力を発揮でき、はるかに大きな成果を期待できる宇宙科学にこそ、もっと力を注ぐベきだ。