【12月23日付社説】森林除染せず/再生への努力は欠かせない 

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 広大な森林の除染は物理的に困難と決め付ける前に、できる所とできない所、あるいはすべき所をはっきりと提示し、空間線量を下げるための効果的な方法の実践を模索していくべきだ。

 森林除染の在り方を検討してきた環境省は、住宅や農地がある生活圏から20メートルの範囲と、日常的に人の出入りがある場所を除き、森林の除染は行わない方針を固めた。それを有識者による環境回復検討会が了承した。

 原発事故によって森林に降り注いだ放射性物質は、多くが森林の地表(林床)にある落ち葉や木の枝などの堆積物に残っている。

 環境省は堆積物を除染で剥ぎ取ると土壌流出を招くとの判断から除染は適当でないと結論付けた。

 森林内での放射性セシウムの挙動に関するデータを50年にわたって蓄積している米国エネルギー省の国立研究所の知見では、森林の土壌を掘削した場合、土壌侵食の増大が懸念されるほか、生態系に重大な影響を及ぼすことへの注意が必要になるとされている。

 環境省は、東京電力福島第1原発事故に伴う避難区域で行ってきた実証事業で、森林内の放射性物質が雨や風の影響で森林の外に流出する量は少なく、生活圏の空間線量への明確な影響は確認されていないことも理由に挙げる。

 だが、原発事故に伴う避難区域をはじめ県内の多くの市町村や県などは、国に森林除染の実施を求めてきた。

 避難区域では住民の帰還に関わる問題だ。林業従事者にとっては、生計に関わる。森林の手入れができないと、山が荒れるとの懸念も募る。

 科学的な知見に基づいて、除染をした場合と、しない場合のリスクをはかりに掛けなければならないというのなら、地元への十分な説明が必要だ。

 環境省がほかに挙げたのが「物理的に困難」(井上信治副大臣)との理由だ。剥ぎ取った土壌をどのように処理するかや技術的な困難さ、費用が膨大になることなどを指してのことと察する。

 確かに県内の森林面積は県土の7割を占める。面的な除染は困難というのは理解できるが、林業の再生や森林と接してきた住民の暮らしを取り戻す視点で、科学的な知見や英知を結集すべきだ。

 これまでに間伐によって線量が下がることが実証されている。効果的で効率的な除染手法の研究の継続を求めたい。生活との関わりが深い森林を、除染の対象地域に絞り込む検討の余地もあるだろうし、地元との議論も必要だ。