【1月13日付社説】水産研究の新拠点/漁業再生へ機能を強化せよ

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 本県の漁業は東京電力福島第1原発事故から5年がたとうとしている今も操業自粛が続いている。

 本県沖にかつての国内有数の漁場を取り戻すための最先端の調査・研究拠点の整備を急ぎたい。

 漁業の復興に向け県が構想を立てた「県水産試験研究拠点」(仮称)の調査費が国の2016年度予算案に盛り込まれた。これを受け県は4月から拠点整備に向けた調査に着手する考えだ。

 構想は、県水産試験場の機能を大幅に見直し放射性物質対策を強化しようというものだ。

 県は原発事故後、いわき市にある県水産試験場と相馬市の同試験場相馬支場で魚介類の放射性物質検査を続けている。

 海水や海底土の放射性物質調査も行っているが、海洋を移動する魚介類への影響などは、より専門的な調査・研究が必要とされる。

 県は原発事故から約1年後に構想を打ち出し、国に新たな調査・研究拠点整備予算の補助を要望してきたが、国は財政上の理由から具体化に難色を示していた。

 操業自粛が長期化する現状を踏まえれば、国がようやく調査費を付けた対応はあまりに遅い。県は18年度中の新拠点完成を見込んでいる。国は本県漁業の実態を把握し、県と連携を取りながら新拠点整備を後押しすべきだ。

 県の構想は、拠点では検査機能を充実させ、魚介類が放射性物質を蓄積、排出する仕組みの解明など専門性の高い研究も手掛ける。

 水産業再生のための技術開発にも取り組み、第1原発港湾内への魚介類の出入り防止技術や、水環境の変化に影響されない養殖技術の開発を進める考えだ。

 本県沖で取れる魚介類は、県の検査で放射性物質の低減傾向が確認されている。漁業者の試験操業では、農産物と同様に厳格な検査が行われている。

 ただ、本格操業に向けて消費者や市場の不安を拭うためには、安全性を説明するための科学的な知見を重ねることが求められる。

 新たな試験研究拠点には、本県水産業の復興をけん引する機能を求めたい。国内で取れる水産物に対して海外から厳しい目が向けられていることも忘れてはならない。新拠点が風評払拭(ふっしょく)の発信力を兼ね備えることも必要だ。

 海洋への放射性物質の影響については、大学などの研究機関が調査や研究に取り組んでいる。

 新拠点には、民間の研究成果や科学的な知見を漁業の再生や風評払拭に結び付ける機能も求めたい。国と県は主導的な役割を果たさなければならない。