【1月30日付社説】森林の除染/暮らしに欠かせぬ里山再生

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 森林の除染を「里山の再生」という観点から捉える。県内の市町村が求めているのはこの点だ。

 政府は環境省と農林水産省、復興庁の3省庁で構成するプロジェクトチームをつくり、本県の森林・林業再生に向けた対策案をまとめる考えだ。

 森林・林業の再生策の検討で柱になるのが、原発事故に伴う森林除染の在り方になる。

 森林面積が県土の7割を占める本県には中山間地が多い。それらの地域では、山林と密接に関わる里山の暮らしが根付いてきた。

 環境省が示している除染の範囲を絞る方針は、そうした暮らしに線を引くようなものだ。

 プロジェクトチームの検討を通し、里山の暮らしを取り戻すという基本的な考えを政府内で共有する必要がある。

 森林除染をめぐって環境省が昨年末に示した方針は、住宅や農地がある生活圏から20メートルの範囲や日常的に人が出入りする場所以外は原則除染しないという考えだ。

 広い森林を面的に除染するのは物理的に困難、落ち葉や木の枝を剥ぎ取ると土壌の流出を招く、といった理由からだ。

 この方針が示された直後から県や県内の市町村、森林関係団体から再考を求める声が上がった。

 県などは丸川珠代環境相に対し、単に除染を打ち切るのではなく、林業再生と組み合わせた除染や生活圏へ放射性物質が流出しない対策を提示するよう求めた。

 山林に囲まれた集落が多く点在している避難区域にとっては、住民の帰還や、地域の暮らしや産業の再建に関わる問題だ。

 飯舘村が政府に提出した要望書には「里山は生活空間の一部。除染なくして村民の生活はあり得ない」と書き込まれた。

 環境省は除染の範囲については地元の意向を踏まえながら柔軟に対応する考えも示しているが、要望への明確な返答はない。

 切実な声に耳を傾けなければならないはずの同省の対応に、県や市町村は懸念を募らせているのが現状だ。与党内からも、複合的な視点から除染の在り方を検討する必要性が指摘されている。

 プロジェクトチームは3省庁の閣僚らで構成される。震災と原発事故から5年となる3月11日までに対策案をまとめる考えだ。

 検討に当たっては、県や市町村が、なぜ森林除染の実施を求めるのかということを忘れないでもらいたい。里山とともにある暮らしが、地域を成り立たせる原点にあるからだ。本県の復興にはこの視点が欠かせない。