【2月3日付社説】試験操業拡大案/漁業再生へ着実に一歩を

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 本県沖で放射性物質を取り込みにくい魚種や海域に絞って実施している試験操業について、県漁業協同組合連合会(県漁連)は、東京電力福島第1原発から半径10~20キロの海域を、新たに操業できる海域として加える案を示した。

 試験操業の海域が、同案通りに拡大されれば、原発事故で操業できない海域は、第1原発の半径10キロ以内を残すだけになる。海域拡大への環境を整え、本県の漁業再生を着実に進めたい。

 同案は、操業自粛の範囲を第1原発の半径20キロから10キロに縮小するほか、10キロ圏内での操業については海水や魚介類の放射性物質検査の結果を基に随時検討する―という内容。案に対する漁業者の意見を踏まえ、今月下旬に開く組合長会議で議論し決定する方針だ。

 本県沖で取れる魚介類は「常磐もの」と呼ばれ、市場から高い評価を受けてきた。その復活は本県復興の柱の一つだ。試験操業の海域拡大は漁業再生への大事なステップで、本格操業に向け実績と信頼を積み上げていく必要がある。

 試験操業海域拡大への展望が開けた背景には昨年10月、第1原発の汚染地下水が海に染み出るのを防ぐ「海側遮水壁」が完成し、原発港湾内の海水の放射性物質濃度が低下傾向にあるなど、汚染水対策が進んだことがある。

 試験操業は2012年6月、操業や販売を試験的に行うことで、出荷先での評価など情報を得ることを目的にスタートした。対象魚種は当初3魚種だったが、いまは72魚種まで増えている。

 県水産試験場が20キロ圏を含む沿岸海域で行っている魚介類の放射性物質検査では昨年4月以降、国の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えた魚種はない。魚の安全が確認できれば操業海域を拡大していくのは当然のことだ。

 ただ、案が示された会議では、海域拡大について一部に慎重な意見もあった。拡大に当たっては、消費者の不安を解消し理解を得ることができるよう十分な検査体制の継続と情報発信が欠かせない。

 試験操業海域の拡大を経て、本格操業を目指すためには、行政の支援体制もさらに充実させなければならない。漁業再生へ県が構想する「県水産試験研究拠点」(仮称)は、国の調査費が16年度予算案にようやく盛り込まれた。18年度中の完成に向けて作業を加速させてほしい。

 また、東京電力には福島第1原発の汚染水対策を徹底し機能させることが試験操業海域拡大、そして本格操業の前提になることをあらためて銘記してもらいたい。