【2月12日付社説】マイナス金利/「副作用」に十分な目配りを

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 日銀は脱デフレ効果を強調するが、国民は新しい政策に不安をもっている。功罪両面ある新政策の意図を丁寧に説明するべきだ。

 日銀が導入するマイナス金利の波紋が広がっている。国民の大切な預貯金金利が下がり始め、長期金利の指標である10年国債の利回りも初めてマイナスをつけた。

 日銀がマイナス金利の導入を決めたのは、金融市場の金利全体を一段と低下させ、企業への貸し出しなど経済活動全般を活発にすることが狙いだった。それにより物価の上昇基調が維持され、デフレから脱却できる、との筋立てだ。

 金融機関が日銀に持つ預金口座へマイナス金利を適用する新政策のスタートは16日からだが、金融市場ではそれに先行してさまざまな金利が下がっている。

 国民がとりわけ気になるのは預貯金金利の動向だろう。定期預金などの金利が既に引き下げられ始めている。年金と蓄えが頼りのお年寄り世帯では特に不安を強めているのではないか。

 一方、住宅や教育ローンなどを利用する人にはメリットが予想される。長期金利は、銀行などがローン金利を設定する際の目安となっており、今後さらに下がる可能性があるからだ。

 その長期金利がマイナスになったことは何を意味しているのだろうか。一つは国債に対する過熱気味ともいえる需要の高まりだ。国債の需要はさらに高まり、日銀が必ず高値で買ってくれるので、持っていて損はないという理屈だ。

 もう一つ見逃せないのは、中国経済の減速や原油安の影響で、景気が悪くなるかもしれないという見通しが反映されているという点だ。市場金利の低下はそれを先回りして示唆している面がある。

 金利の全体的な低下は日銀が予期したものかもしれない。しかし、景気の悪化を織り込んで下がった部分は、市場が早くも日銀の追加金融緩和を促している皮肉な結果ともいえる。

 マイナス金利決定から2週間。この間の市場を見る限り株価の動揺は収まらず、為替は円高方向に振れている。10年国債の利回りもゼロ%を挟み乱高下している。

 日本経済が脱デフレの目標をいまだ実現できない大きな理由は、人口減で縮小する国内市場を前に、企業が投資や賃上げに慎重姿勢を崩さないからだとされる。

 その前提が変わらない中でのマイナス金利の効果は限定的とみられ、リスクも指摘されている。日銀は「副作用」に十分目配りしながら、実効ある市場安定化策を講じていかなければならない。