【3月2日付社説】震災5年 避難区域/住民帰還への明確な道筋を

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 政府が帰還困難区域を除く避難指示解除の「期限」とする来年3月まであと1年。居住制限区域と避難指示解除準備区域を抱える自治体は重要な局面を迎える。

 南相馬市、川俣町、葛尾村の3市町村で今春の避難指示解除を見据えた準備宿泊が行われており、政府は具体的な解除時期について地元との協議を進める方針だ。

 原発事故から5年の間、散り散りになったコミュニティーをつなぎ留めようとしてきた区域にとって、ようやく帰還の実現に見通しがつくようになった。

 自治体や住民が、そう捉えることができるかどうかは、除染の進展やインフラの復旧、生活基盤の整備が鍵を握る。

 とはいえ政府と地元との協議は難航しているのが現状だ。医療や買い物の環境が整っていないことや、住民の被ばくへの不安が根強いことが背景にある。

 これらは、避難生活を送る住民が帰還を判断するための重要な条件だということを、政府は肝に銘じなければならない。
 避難生活が長引けば、それだけ住民の帰還意欲がそがれかねないが、帰還を判断するための暮らしの基盤再建を急がなければ「解除ありき」とのそしりは免れない。

 政府には具体的な再建策を地元に示した上で、丁寧な協議を進めることが必要だ。

 すでに避難指示が解除された地域の復興も加速させなければならない。

 ただ、旧緊急時避難準備区域だった広野町をはじめ、避難指示解除準備区域が解除された楢葉町と川内村、田村市の一部地域では、住民の帰還の動きは鈍い。

 戻った住民の多くが高齢者という現状もある。医療や商業施設、民間企業の事業再開などの動きは緒に就いたばかりだ。

 高齢化の急激な進行と人口減少という地方が抱える課題の縮図と捉え、まちの活気を取り戻すためのさまざまな政策を動員していくことが不可欠だ。

 県内で避難指示が出された12市町村のうちの富岡、大熊、双葉、浪江の4町と飯舘村でも、帰還を見据えた復興を形にしていくことが求められている。

 そのためには福島・国際研究産業都市構想に基づく廃炉、ロボットの研究・開発拠点整備や再生可能エネルギーの集積、農業の再生など、産業復興の道筋を明確に示していかなければならない。

 避難区域の復興に向けては国と県、地元自治体が一体となり、息の長い取り組みと住民の生活再建を急ぐ双方の視点が求められる。