【3月9日付社説】震災5年 産業の再生/正念場乗り越え回復軌道に

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 元気な福島県を取り戻すためには、東日本大震災と原発事故からの産業再生を急ぎ、本県経済の足腰を強くしなければならない。

 本県は全国有数の農業県として全国に農産物を供給してきた。放射性物質の吸収抑制対策や徹底した検査を行い、安全な農産物の出荷に努めた結果、回復基調にあるが、風評は根強く、産出額は震災前の水準を下回ったままだ。

 県内のJAは今月1日、17JAのうち16JAが合併して、新たな四つのJAとなり、それぞれが全国で有数の規模となった。残る1JAも合併協議を続ける。

 合併は農家の担い手不足や組合員の減少など厳しい状況を踏まえた経営基盤の強化が目的だ。合併により組織は規模が大きくなり広域化した。合併効果を生かしながら、組合員へのきめ細かな営農・経営指導を行き届かせることができるかどうかが課題だ。

 漁業は本県沖で試験操業が続いている。対象魚種は当初の3魚種から72魚種まで増えた。県漁連は対象海域の拡大を議論している。本格操業の再開に向けては担い手の確保など漁業者側の課題もあるが、何より第1原発の汚染水対策が徹底されなければならない。

 震災と原発事故で売り上げが落ちた商工業も回復の兆しを見せている。東北経済産業局によると、県内の百貨店・スーパーの2015年の販売額は、震災前の10年の1.14倍まで伸びている。

 また、大規模太陽光発電所(メガソーラー)を中心に、再生可能エネルギーへの取り組みが加速している。最先端ロボットの研究開発なども進み、県内の商工業は新しい時代を迎えつつある。

 一方で、中心商業地の空洞化や後継者不足など、震災前からの課題を踏まえた振興策が不可欠だ。

 各産業への波及効果が大きい観光は観光客数が震災前の8割超まで回復したが力強さに欠ける。県は今年、昨年の大型観光キャンペーンを受ける形で、55の特別企画を打ち出し誘客を図る。しかし一過性のイベントに頼る誘客には限界も見える。全国的に急増する訪日外国人の取り込みなど継続性のある誘客策づくりが急務だ。

 震災後、県内経済を支えてきた復旧・復興需要は業種や地域の差はあるもののピークを過ぎた。加えて東電は商工業者向けの営業損害賠償について新基準を示すなど環境は変化している。

 県民の雇用や暮らしを支える産業の再生加速に向けては、震災5年で迎えた正念場を乗り越えるための確かな方策と強い意志が求められる。