【3月11日付社説】3.11から5年/前を向き未来ひらく起点に

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 「応援されるより、応援する方が元気になる。誰かのために何かをする喜びが人を元気にする」。本紙「震災5年・識者に聞く」で医師の鎌田實さんが話している。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から5年。きのうよりきょう、きょうよりあした...。より多くの人々が応援する側に回る好循環を生みだし、「新生ふくしま」をつくる原動力にしたい。

 復興をめぐる思いはさまざまだ。5年間を振り返れば、あんぽ柿の出荷再開、国道6号の通行規制解除、常磐道の全線開通、ふたば未来学園高の開校など、少しずつだが着実に積み重ねられてきたものがある。

 一方で、いまも9万7千人余の県民が避難生活を続けている。昨年9月に避難指示が解除された楢葉町に戻った住民は1割に届かず、帰還困難区域など解除のめどが立たない地域もある。原発事故の風評はやまず農産物や観光が敬遠されているという現実がある。復興はまだまだ途上だ。

 この5年間、一時も忘れられないことがある。2011年3月11日午後7時3分、内閣総理大臣が発した第1原発の「原子力緊急事態宣言」が解除されないまま継続中であることだ。

 原発事故を完全に収束させ、廃炉作業を安定的に進めることが本県復興の大前提だ。そのためには凍土遮水壁など汚染水対策をしっかり機能させ、本格的な廃炉作業へと確実に前進させなければならない。政府と東電にはその責任を全うするよう重ねて求めたい。

 政府が決めた震災の復興期間は10年。前半5年の集中復興期間を終え、来月から復興・創生期間に入る。復興の進み具合は地域や業種によって一様ではない。少子高齢化に加え過疎化や中心商業地の空洞化など震災前からの課題も立ちはだかる。しかしこれらの難題を乗り越えてこそ、未来がひらけると信じて県民が力を合わせたい。

 復興に向かって頼もしい手本がたくさん誕生している。県産清酒は昨年、全国新酒鑑評会で24銘柄が金賞を獲得し、3年連続で「日本一」に輝いた。原発事故後、業界全体で危機感を共有し、研さんを重ねた成果だ。

 福島市の土湯温泉で進められている温泉熱利用のバイナリー発電は目標を上回る実績を挙げ、再生可能エネルギーでまちおこしを目指す自治体などの視察が相次ぐ。原発事故で避難、休業を余儀なくされた相双地方の酪農家が再起をかける福島市の「復興牧場」は乳牛が500頭まで増えた。

 苦境をバネに変えるたくましさがあれば、さらなる高みを目指す勇気をもつことができる。県内では各地で新しい取り組みが始まり、前を向き自ら立ち上がることの大切さを教えてくれる。

 幸福になろうと欲しなければ、幸福にはなれない―。フランスの哲学者アランの言葉だ。まだまだ心のやりどころがないという人も多いが、5年の節目、自らのいまと向き合い、新しい「幸せのかたち」を見いだす出発点にしたい。