【3月16日付社説】教科書謝礼問題/採択の公正性を揺るがすな

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 子どもたちが使う教科書の公正性や信頼性を揺るがすようなことがあってはならない。

 教科書会社が検定中の教科書を教員に見せていた問題で、県内では教科書を閲覧した39人のうち、校長を含む30人が謝礼として現金を受け取っていたことが県教委の調査で分かった。

 現金を受け取った教員らへの聞き取りでは「教科の勉強会に参加してほしいと言われ、よく考えずに参加してしまった」「休日に出向いた旅費や日当として安易に受け取ってしまった」「固辞したが、断り切れずに受け取ってしまった」などと話しているという。

 30人のうち3人は教科書採択に関与する立場にあり、閲覧した教科書が採択された。県教委は「採択結果を誘導するなどの関与は確認できなかった」としているが、金品の授受は公正な教科書採択をゆがめる恐れがあり、公務員としての自覚が欠如していたとの批判は免れない。

 この問題では、小中学校の教科書を発行する22社のうち12社が、検定中の教科書を全国で延べ5000人以上の教員らに見せていた。うち10社が延べ4000人近くに謝礼を渡したとするが実際に受け取った人数は不明で、文部科学省が都道府県教委に調査を求めている。

 検定中の教科書を外部に見せることは、文科省の教科書検定規則の実施細則で禁じられている。一方、教科書業界にも採択関係者への金品提供を規制する自主ルールがある。ルールに反する行為が常態化しているならば早急に改めなければならない。

 文科省は、問題を受けてこれまでの制度を見直す方針だという。市町村教委などが使用する教科書を決める採択期間中に、教科書会社が教科書の内容を解説したり、意見を聞いたりする説明会を開くことを検討している。

 教科書の内容をより良くするために、学校現場の意見や要望を聞くことは意義がある。今回のような問題の再発を防ぐためには、透明性が確保され、意見などが十分に教科書に反映できる仕組みをつくる必要がある。

 教科書の選定は4年に1度で、少子化による市場の縮小もあり、教科書会社の営業活動は過熱化している。次代を担う児童生徒のためには質が高く中身の濃い教科書づくりにこそ力を注ぐべきだ。

 他県では、文科省の対応とは別に、独自に再発防止策を講じる動きもある。教科書制度の基礎的な説明資料の教員への配布など、県や市町村教委でできるものから取り組んでもらいたい。