【3月19日付社説】富岡で特例宿泊/帰還への道筋確かなものに

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 東京電力福島第1原発事故に伴い全町避難が続く富岡町で、帰還困難区域を除き、町民の自宅宿泊がようやく可能になった。

 短期間に限った宿泊になるが、生活圏の除染がほぼ完了し、上下水道などの公共インフラの復旧が進んだとして、政府が同町では初の「特例宿泊」を認めた。

 政府は春の彼岸に合わせた今月17日から23日までの実施と、4月の桜の開花時期や、大型連休期間中の実施も予定している。

 特例宿泊は、政府が避難指示の解除を検討するための前段となる措置だ。町は「早ければ来年4月から」と帰還目標を掲げている。

 避難から5年が経過し、ようやく見通せるようになった帰還への道筋を確かなものにしたい。

 特例宿泊の対象は、避難指示解除準備区域と居住制限区域の合わせて約3900世帯9800人。このうち彼岸期間の宿泊の申請は1%にも満たない。

 住宅の修繕が進まなかったり、買い物や医療環境が整っていないことで、自宅での宿泊に不安を感じる町民も多いのだろう。

 政府は特例宿泊の実施を続けていくことによって、町民の帰還準備を手助けし、生活基盤の環境を整えていくことが必要だ。

 復興に向けて町では、公設民営の商業施設や公設診療所の開所準備が進んでいる。今月には東電福島復興本社が町内に移転し業務を開始した。

 福島第1原発の廃炉に向けて国内外から研究者が集い、技術開発や人材育成に取り組む日本原子力研究開発機構(JAEA)の研究施設の整備も決まっている。

 復興への動きが具体化する一方、町内の管理型処分場で県内の指定廃棄物を最終処分する国の計画もある。「迷惑施設」を受け入れざるを得ない町の地域振興策をいち早く提示し、安全確保の対策を進めていくことが重要になる。

 避難指示区域となった11市町村のうち、特例宿泊の実施は富岡町が8番目になる。同町は南双葉地域の中核的存在で、原発事故前には周辺の町村から買い物や通勤する人を数多く受け入れてきた。

 周辺町村と共に歩み、地域に果たしてきた役割を取り戻す。そうした取り組みを加速させていくことが、町民の帰還への希望にもなるだろう。

 避難指示区域では飯舘村でも特例宿泊が始まっている。南相馬、川俣、葛尾、川内の4市町村ではこの春以降の避難指示解除に向けた「準備宿泊」が行われている。広域的な視点から、住民の暮らしの再建を急ぐことが求められる。