【3月25日付社説】国機関の地方移転/看板倒れで終わらせるのか

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 東京一極集中の是正に向けて、政府は民間企業に本社機能を地方へ移すよう求めているが、これでは模範を示すどころか看板倒れではないか。安倍晋三政権が地方創生の柱として掲げた国の機関の地方移転のことだ。

 政府が決定した基本方針では、具体的な移転の方向性が示された中央省庁は文化庁だけで、政府の本気度が問われる結果となった。

 政府が機関の地方移転を打ち出したのは、地方の人口減少を食い止めるため、雇用を確保する狙いがあった。規摸は小さくても国の組織が率先して地方に移ることで、企業の本社移転を促す効果も期待されていた。

 しかし、省庁の多くは国会対応などを理由に移転に難色を示した。馳浩文部科学相が文化庁の京都移転を受け入れ「ゼロ回答」は回避できたが、省庁側の消極姿勢が、企業の動向に悪影響を及ぼす可能性も否定できない。

 省庁以外では、22の研究機関・研修施設が移転対象とされたものの大半は組織を移さず、大学や企業との共同研究や研修の開催などで、移転とは名ばかりの内容となった。本来の機関移転が実現したとは言い難い。

 内閣官房幹部は「地域活性化のメリットが大きく、地方の期待に応えることができた」と自賛するが、代替え措置として示された出先機関などの強化は、地方活性化のメリットというより行政組織の「焼け太り」が懸念される。

 本県関係では、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想で整備を予定するロボット実証拠点と国際産学連携拠点の新設が盛り込まれた。

 政府は昨年末に移転候補を絞り込んだ時点では、両拠点について「新エネルギー・産業技術総合開発機構」を実施運営主体として示していたが、今回の基本方針で同機構は対象から外された。今後は実施運営主体の確定を含めて新設プランを練り、両拠点の確実な実現を図らなければならない。

 県は、今回の決定を評価しているが、当初4機関8部門の移転を提案していた本県としてはいささか物足りない結果だといえる。首都圏に近い地の利だけをみても本県には移転適地が多いことを政府は再認識すべきだ。

 東京の企業集積は世界一といわれる。上場企業の半数が都内に本社を置く。政府は首都直下地震など防災対策の観点からも、東京に集中する省庁などを地方に分散させる取り組みを強化し、民間企業などに範を示す必要があることを銘記しなければならない。