【4月3日付社説】改正自殺対策法/大切な命を救う輪広げよう

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 全ての自治体に自殺防止の計画づくりを義務付ける改正自殺対策基本法が施行された。大切な命を守るために、実効性のある手だてを確実に講じる契機としたい。

 自殺防止対策の計画づくりはこれまで、各自治体の自主性に委ねられていたが、改正法では全ての都道府県と市町村が計画を策定するよう定めた。自殺の背景にある問題を地域ごとに分析し、実態に即した対応を促すのが狙いだ。

 県内では、県が2007年に県自殺対策推進行動計画を策定。県によれば約20市町村が自殺防止に関する計画をつくっている。

 自殺防止の取り組みは地域によって温度差があるのが現状だ。計画が未策定の市町村は計画づくりを急ぐ必要がある。既に策定している県や市町村も、対策の効果を見極めながら、内容を充実させていくことが求められる。

 厚生労働省の統計によると、県内の自殺者は1998~2011年は14年連続で500人を超えたが、12年以降は400人台で推移し減少傾向にある。ただ、全国的に見ると低い水準とは言えない。14年の421人は、人口10万人あたりに換算すると21.8人で、全国平均の19.5人を上回る。

 県は計画の中で、本年までに年間の自殺者を410人以下に抑えることを目標に掲げている。それには住民に最も近い市町村が主体的に対策を講じることが肝心だ。

 警察が、県内での自殺事案の動機を調べたところ、「健康への不安」「家庭問題」「生活困窮」が上位を占めた。しかし、詳しくみれば町村部など高齢者の多いところでは病気や介護の悩み、都市部では失業など仕事の不安というように地域によって傾向が異なっている。

 さらに、震災と原発事故により長期避難を強いられている自治体があり、ストレスによる自殺も依然懸念されている。

 各自治体は詳しくデータを分析し、福祉や教育、労働など関係する部署が一体となって対応することが重要だ。自殺防止や遺族支援などに取り組む民間団体との連携も強め、さまざまな悩みに対応するための相談体制を拡充したい。

 改正法は、学校が保護者や地域住民と連携し、児童生徒に「SOSの出し方」やストレスへの対処法を教育、啓発することも盛り込んだ。いじめなどによる自殺を防ぐための取り組みを強化したい。

 就職や新入学などで新生活を始めた人も多い。環境の変化などで身近な人が悩んでいないか心を配りたい。共に支え合うことで一人でも多くの命を救いたい。