【4月21日付社説】高齢者と運転免許/返納後の生活支援に本腰を

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 運転免許を返納する高齢者が増えている。事故防止策の強化とともに、免許返納後の高齢者を支える施策の充実に力を注ぎたい。

 県内で昨年1年間に運転免許を自主的に返納した人は2644人に上り、制度が始まった1998年以降で最多となった。9割以上を65歳以上の高齢者で占める。

 昨年成立した改正道交法では、75歳以上の高齢者に対する運転免許制度を見直し、認知機能検査を強化した。免許更新時の検査で「認知症のおそれ」があると判定された全ての人に医師の診断書の提出を義務づけた。発症していたら免許の停止か取り消しとなる。

 来年6月までに施行することになっており、運転免許を手放さざるを得ない高齢者が増えることが予想される。

 県警によると、県内の免許保有者のうち65歳以上は約29万人と全体の2割強を占め、75歳以上は約9万人いる。交通事故の発生状況をみれば、昨年の死亡事故77件のうち、高齢運転者が原因となったのは22件で3割弱を占めている。

 高齢になれば認知症にならなくても判断力や運動能力、記憶力の低下が起こる。ペダルの踏み間違いによる事故や、高速道路での逆走などが問題になっており、交通事故の未然防止という観点から返納の動きが広まるのは好ましい。

 しかし、問題になるのは免許を手放すと移動手段がなくなるお年寄りが多いということだ。本県など地方においてマイカーは必需品であり、免許の返納は生活の足を奪われることを意味する。

 生活圏のバスの便がよくなく、タクシーを使う余裕がなければ、日常の買い物や通院にたちまち困ることになる。この結果、運転に不安を感じながらも、ハンドルを握らざるを得ないお年寄りが多いのが実情ではないか。

 県内でも免許返納者らを対象にバスを無料にしたり、タクシーの料金を割り引くなど、高齢者を支援する動きが各地にあるが、まだまだ十分とは言えない。

 自治体が旗振り役となって民間の事業者や団体などを巻き込み、地域の事情に合った交通システムや施策を整えることが急務だ。

 高齢者とマイカーといえば、通院や買い物を連想しがちだが、運転を「生きがい」や「楽しみ」と考える人の割合が高齢になるほど増えるという研究結果もある。

 高齢社会は待ったなしで進む。マイカーを手放しても暮らしに困らず、生きがいや楽しみを老後に見いだすことができるような社会づくりのために行政、民間を問わず本腰を入れる時期に来ている。