【4月29日付社説】原発事故避難/悲劇を繰り返してはならぬ

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 過酷な広域避難を強いられた東京電力福島第1原発事故の教訓を生かさなければならない。

 大熊町の双葉病院に入院し、原発事故後に避難先で死亡した患者2人の遺族が東電に損害賠償を求めていた訴訟の判決で、東京地裁は「長時間の搬送など過酷な環境にさらされた」として、原発事故が死亡につながったと認め、東電に賠償金の支払いを命じた。

 双葉病院の患者と系列の介護施設の入所者は原発事故の避難後、2011年3月末までに50人が死亡した。同病院を巡り患者の遺族らが起こした損害賠償請求訴訟で判決が出たのは今回が初めて。

 何が起きたのか、どこへどう避難したらいいのか―。原発事故当初、原発周辺では住民も行政も極度の混乱状態に置かれたが、寝たきり患者ら「災害弱者」はその中で最も厳しい局面に立たされた。

 12年にまとまった国会事故調報告書は双葉病院の例などを挙げて「病院には行政から十分な支援がなされず、医療関係者らは独力で避難手段を探し、入院患者の受け入れ先を確保しなければならなかった」とし、患者避難にかかわる県の主体性不足を指摘した。

 県は14年春、原子力規制委員会の原子力災害指針を踏まえ、再度の原発事故に備えて広域避難計画を作った。第1、第2原発から30キロ圏の13市町村ごとに、避難先を他の県内46市町村に割り振り、茨城県への避難も想定した。

 さらに昨年には指揮系統一元化へ危機管理部を新設。広域避難計画も修正を重ねているが、行政間や関係者間の連携など改善しなければならない点はまだまだある。13市町村に求められている広域避難計画の作成も7市町村(3月現在)にとどまっているのが現実だ。

 東大の研究者らでつくるチームは昨年、避難を余儀なくされた南相馬市の老人福祉施設の入居者が被った「避難によるリスク」と、避難せずに施設にとどまった場合の被ばくリスクとを「損失余命」の尺度で比べた結果、避難によるリスクの方が約400倍高かった―とする論文を発表した。

 避難の可否やその時期の判断は災害によって異なり難しい。まして事前に全てを決定するのはさらに困難だ。しかし、災害に備えて避難のタイミングや移動手段などを想定し、避難に伴うリスクをできるだけ下げるための態勢を整えることはできる。

 政府や県、市町村だけでなく、それぞれの立場で、いつ起こるか分からない災害に備えることが肝要だ。悲劇を二度と繰り返してはならない。