【5月26日付社説】市街地にクマ/被害防止へ密な情報交換を 

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福島市の市街地でクマの目撃が相次いでいる。いずれも住宅や学校、職場の近くだ。市民に危害が及ばないよう、警戒を怠れない。

 目撃情報は23日に3件、24日に2件寄せられた。23日は市街地の中心部に位置する信夫山一帯、24日はそこから4キロほど離れた市街地西部の地区。

 運動公園が整備されている住宅地の河川敷や、市民が散歩やランニングをしている道路、工場の駐車場などで、部活動中の高校生や帰宅途中の人、工場の社員らの目に留まった。

 工場の防犯カメラに写った姿や目撃情報から、野生のツキノワグマに間違いないようだ。冬眠から目覚めた春先からこの時期にかけ、山間部や森林に近い場所などで目撃例が多くなる。

 今回、なぜ人や車の往来が激しい地帯に入り込んだのかと驚くばかりだが、野生のクマが市街地に出没するケースは、今回の福島市に限ったことではない。

 県によると一般的に警戒心が強いといわれるクマだが、近年は生息域が人の生活圏に近づいているという。有害鳥獣として捕獲した地点の平均の標高をまとめた統計では、1989(平成元)年は719メートルだったのが、2012年は412メートルまで下がっている。

 ツキノワグマは県の北西部に連なる奥羽山脈や越後山脈を中心に分布しているが、本県を縦断する阿武隈川より東の阿武隈山地でも目撃されるようになった。

 県の生態調査では、相馬地方で確認されたツキノワグマのDNAを調べたところ、奥羽地域由来のものだったことが判明している。

 生息域が拡大しているということだろう。要因としては、本来のクマのすみかである奥山と人の生活圏を隔てている里山の荒廃、餌となるドングリ類の結実の具合などが挙げられよう。

 注意しなければならないのは、里山をはじめ広がった生息域にクマが定着する懸念があることだ。

 農作物や取り残された果実などを餌にしている「里のクマ」が、河川敷をつたって市街地に下りてくるケースがあることを、猟師や猟友会が指摘している。

 福島市では市や県警、JAなどが捕獲用のわなを仕掛ける対策を取り、市教委は周辺の学校に注意を呼び掛けている。

 人的被害を防ぐには、クマとの遭遇を避けるしかないようだ。生ごみなどは前の晩に出さずにクマを近づけない対策も必要だ。関係機関がクマの生態や行動パターンなどの情報交換を密にし、連携しながら対応を取ってほしい。