【5月29日付社説】出生率上昇/楽観視せず着実に手を打て

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 全国の出生数は100万人の「大台」を保ち、合計特殊出生率もわずかに上昇した。しかし今後も楽観視できる状況にはない。安心して産み育てられる社会をつくるために着実に対策を講じたい。

 厚生労働省が2015年の人口動態統計を公表した。1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数を示す合計特殊出生率は1・46で2年ぶりに上昇、1994年(1.50)以来の水準となった。出生数も100万5656人で5年ぶりに前年を上回った。同省などは景気の回復傾向や、人口減少に危機感を持った自治体が少子化対策を強めたことが後押ししたとみる。

 しかし、第1子の晩産化と第2子以上の減少、団塊ジュニア世代が40代半ばに差し掛かり「出産世代」が減るといった人口構成を考えれば、安倍晋三政権が約10年後の目標とする出生率1.8の実現は相当厳しいのが実情だ。

 そんな中でも、安心して子育てができる状況が整えば、1人だけでなく、2人目以降も出産したいと考える女性が多いことは各種調査からうかがうことができる。

 若い世代の雇用安定や育児・教育費用などの経済的支援に加え、休職・復職や男性の育児休暇取得など仕事と子育てが両立できる環境整備の手を緩めてはならない。

 政府が月末に閣議決定する「1億総活躍プラン」には、保育所の待機児童解消や女性の活躍推進、不妊治療の充実、3世代同居の支援など子育て世代をターゲットとした政策が並ぶ。

 その一方で、若者の雇用安定・待遇改善は、正社員転換に向けた企業への働き掛けが目立つ程度で、非正規雇用の若者たちの未婚化への目配りが足りないとの指摘が出ている。

 出生率を上げるためには若年男性の雇用安定が欠かせない。数値目標を定めて企業に義務化するなど実効性を高める施策が必要だ。女性に対しても正規雇用で子を持つ人だけでなく、多様な働き方への支援策が求められる。

 本県の出生率は前年比0.02ポイント上昇して1・60となり、14年ぶりに1.60台を回復した。3年連続の上昇であり朗報だ。県は12年度からの18歳以下の医療費無料化や除染の進行など子育て環境が整ってきたことを要因として挙げる。

 しかし、出生数は1万4195人(前年比322人減)と減少傾向が続く。出生率が多少上がっても、出産年齢にある女性の人口が減れば出生数は増えない。出生率の上昇を目指すとともに、人口減少を抑えるための施策を充実させていくことが重要だ。