【6月4日付社説】トリチウム処分/風評被害最大限に考慮せよ

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 東京電力福島第1原発の汚染水対策で課題として積み残されている放射性トリチウム(三重水素)を含む水の処分をどうするか。

 具体策の検討に入る政府に求めたいのは、風評被害をはじめ地域社会に及ぼす影響を、最大限に考慮することだ。

 トリチウムの処分を巡っては経済産業省の作業部会が先ごろ、「海洋放出」が最も低コストで、最も処理期間が短い―とする試算結果を報告書にまとめた。

 東電は原子炉建屋の汚染水を多核種除去装置(ALPS)などで浄化処理しているが、トリチウムは取り除くことができない。

 水素と性質が同じなためいまの技術では分離できず処理水を敷地内のタンクで保管している。このままではタンクを増設していくしかないが、それには限界がある。

 タンクを増やすと、それだけ後の放射性廃棄物が増えることにもなる。トリチウムを含む水の扱いは事故後から宙に浮いたままだ。

 試算では海洋放出、地層注入、蒸発などで大気へ放出する方法、固めて地下に埋める方法ごとに費用と処理期間を比較した。

 その結果、海洋放出は全量処理まで7.3年、費用は34億円とされた。期間の最長は固めて地下に埋める方法で76年、費用の最高は地層注入で4000億円だった。

 報告書を基に政府は今後、処分方法の議論に入る方針だが、県内の漁業関係者から、海洋放出への反発の声が上がっている。

 試験操業の魚種や海域が広がってきた矢先のことだ。海洋放出になれば新たな風評被害を生むとの懸念を抱くのは、当然といえる。

 ましてコストや期間だけを示されても、経済的な合理性が検討のたたき台になるように映るだけだ。対策の必要性に地元の理解を得ようという姿勢には見えない。

 トリチウムは人体への影響が少ないとされる。薄めるなどして濃度基準を下回れば、海に流すことは国際的に認められている。運転中の原発からの海洋放出は、長年続いている処理方法だ。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長(福島市出身)は、処理水の海洋放出が汚染水問題の解決につながる考えを示している。

 国際原子力機関も、汚染水のリスクを下げるための持続可能な対策を講じる必要性を挙げ、海洋放出の検討を政府に求めてきた。

 内堀雅雄知事は政府に対し「経済合理性だけでなく、社会的な影響も含めて議論してほしい」と注文をつけた。政府は仮に海に流した場合の影響の度合いや、風評被害対策を示すことが必要になる。