【6月8日付社説】土地の所有者不明/制度の抜本改革が不可欠だ

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 県内の除染で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設整備の足かせになっているのが、所有者が直ちに特定できない「所有者不明」の土地問題だ。

 だが、大熊、双葉両町の予定地に限った特有の問題ではない。震災被災地の災害対応や全国各地の行政事務でも顕在化している。問題解消のためには、土地制度自体を抜本的に見直す必要がある。

 中間貯蔵施設の整備では、不動産登記簿上の地権者約2400人のうち、所在が分からない土地所有者が今年3月末時点で約890人に上り、用地交渉が進まない大きな要因になっている。

 例えば、集落ごとにある共同墓地などでは、持ち主が複数いるものの、亡くなっていたり、連絡が取れなくなった人もいる。

 一般的にこうしたケースで問題になるのが、所有者が亡くなった後に相続の登記が行われないまま代替わりが進んでしまうことだ。

 代が替わるごとに相続の権利を持つ親族が増え、権利関係が複雑になっていく。相続人を特定するためには戸籍や家系図などを丹念に追いかける作業が必要になり、用地交渉に入るまでに多くの時間とコストがかかってしまう。

 最も古い登記簿上の地権者の中には江戸時代後期生まれの人の名があるといい、地権者交渉に当たる環境省はこうした現状から整備が遅れていることを認めている。

 震災復旧でも同様に、再開発や道路の拡幅など広い土地を集約する事業で土地取得に時間がかかっているのが現状だ。

 その要因として、一元的な土地台帳がないといった旧態依然の土地制度が根底にあるという現状に目を向けなければならない。

 行政機関が土地の所有状況を把握するのは、主に地籍調査や不動産登記簿の確認などだが、地籍調査は進んでいない。不動産登記は任意によるものだ。

 相続登記が行われていない場合、地価が安かったり、財産価値や利用価値が低いといった事情が考慮されるケースがあるという。

 山林や原野などでは、登記に必要な費用が資産価値に見合わないという制度の手続き上の問題の懸念もあるだろう。

 土地の「所有者不明」は、市町村にとって固定資産税の徴収にも関わる問題だ。専門家や研究者からは人口減少と地価下落が進む地方で今後、「所有者不明」の土地が増えるとの指摘が上がる。

 国は「所有者不明」の解消が、震災と原発事故からの復興とともに地方創生の行方も左右する政策課題であると肝に銘じるべきだ。