【6月14日付社説】農地バンク/危機感バネに事業を軌道に

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 本県の農業再生に向けて、農地を必要な人に集めて生かす農地バンク事業を軌道に乗せたい。

 農地バンク(農地中間管理機構)は、政府の農業改革の柱として各都道府県に設けられ、2014年度から事業が始まった。飛び地となっている農地や耕作放棄地などを借りて、効率的に農作業ができるよう農地を集積し、経営規模の拡大を目指す農家や新規就農者、法人に貸し出す役割を担う。

 本県の農地バンクが15年度、県内農家に貸し出した面積は約2600ヘクタールで、初年度の14年度に比べ約3・6倍に増えた。農地の調整役を増やすなどした効果が表れた格好だ。しかし、政府から割り当てられている23年度の本県の集積目標面積は10万8450ヘクタール。これまでの集積面積は13年度以前のものを含めても目標に対して56%にとどまっており、農地集積の加速化が求められる。

 本県の農地バンクを運営する県農業振興公社は、16年度の目標を前年の約2倍に当たる5300ヘクタールに設定した。同公社と県は、調整役を増員したり、モデル集落を選ぶなどの推進策を講じる。市町村や農業団体との連携をさらに強化し、目標達成を目指してほしい。

 県内の農業情勢は、農産物に対する原発事故の風評被害が残るものの、規模拡大への意欲は全体として高まっている。一方で、代々受け継がれてきた農地を貸すことに抵抗感を持つ農家もあり、農地の受け手に対し、農地所有者である出し手が足りないのが現状だ。集積を進めるためには、出し手の信頼を醸成し、安心して農地を貸し出せる環境や制度に改善していかなければならない。

 農林水産省が2、3月に行った農地バンクに関する市町村と担い手を対象にした抽出調査が興味深い。本県分の結果を見ると、農地バンクの認知度について、担い手の92%が「(出し手は)ほとんど認識していない」という厳しい見方を示した。市町村の回答でも43%に上る。集積を進めるためにまずは事業の周知徹底が不可欠だ。

 調査では「10年後の人と農地の状況」も聞いた。市町村は全てが「非常に心配」と回答。担い手も54%が「非常に心配」、46%が「ある程度心配」と答え、「心配ない」はゼロ。ともに危機感を募らせている状況は明らかだ。

 本県農業が持つ課題は風評払拭(ふっしょく)だけではない。全国一の耕作放棄地の縮小、生産性や国際競争力の向上など山積する。これらの課題を解消していくためにも農地の集積は必要だ。危機感をバネに着実に対策を講じていきたい。