【6月17日付社説】東電社長「溶融使うな」/「隠蔽」の指示ではないのか 

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 「炉心溶融という言葉を使うな」
 この発言に原発事故の深刻な事態を隠そうという意図があった、とみられるのも当然だろう。それを隠蔽(いんぺい)というのではないのか。

 東京電力が福島第1原発事故当初、原子炉の核燃料が溶ける「炉心溶融」が起きていたのに、そこまで至っていない「炉心損傷」と説明していた問題のことだ。

 東電の第三者検証委員会がきのうまとめた報告書によると、事故があった2011年3月以降、当時の清水正孝社長が「炉心溶融」を使わないよう幹部に指示していたことが明らかになった。

 危機的な事態が進むさなか、事故当事者の東電の経営トップが、事故を過小に見せようと映る指示を出した理由は何だったのか。

 報告書では当時、清水社長は首相官邸からの指示として、記者会見中の副社長に「この言葉(炉心溶融)は絶対に使うな」とまで伝えていたことも判明した。

 報告書は官邸のだれが、どのような内容で指示したのかは確認できなかったとするが、官邸の対応が東電トップの判断に結び付いていたとも疑われる内容だ。

 重大な情報が伝えられず、県民が、県や市町村が、どれほど翻弄(ほんろう)されたかを思い出せば、報告にある東電や政府の情報公開の姿勢は到底納得できるものではない。

 この問題は今年2月になって判明した。新潟県が求めた調査で、東電が炉心溶融を判定する基準を記した社内マニュアルを発見したと発表したことからだ。

 東電は事故当初、基準に従えば炉心溶融と判断できるデータを確認していたものの「基準は存在しない」として、「炉心損傷」と説明していた。

 東電が事故後約5年にわたり、マニュアルがあったことを見過ごしていたことについては、「意図的な隠蔽ではない」というのが第三者委の見解だ。

 「秘匿しなければならない理由はない」というのがその理由だが、事故対応時の経営トップの発言自体が隠蔽の指示ではなかったのかは、はっきりされていない。

 報告書を、過小評価問題の検証にとどまらせてはならない。東電と当時の政府関係者は、事故から5年を過ぎてなおさら深まる疑問に、説明を果たす責任がある。

 事故当初の政府、東電の対応を巡り、事故から5年を過ぎてもうやむやになっている点があることは明らかだ。

 政府自身が真相解明への強い決意を持ち、今後の原子力防災に福島第1原発事故の教訓を生かさなければならない。