【6月25日付社説】英がEU離脱へ/欧州統合の成果心に留めよ

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 欧州連合(EU)域内の自由な商品、資本の移動による経済的恩恵を犠牲にしてまでも、移民流入や過激派によるテロ、格差拡大などの社会不安を抑え込み、「大英帝国」の栄光回復を願う有権者の心情が決め手となった。

 英国で行われた国民投票で、有権者はEU離脱を選択した。EU加盟国の離脱は1993年の正式発足以来、初めて。残留を訴えてきたキャメロン英首相は10月までに辞任すると表明した。

 英国は約2年の準備期間を経て離脱に向かうが、雇用や経済成長を維持する道は険しい。英国民はこれまでの欧州統合の成果を忘れず、国際協力を継続することで山積する難問に取り組んでほしい。

 離脱派が勝利したことで世界の金融市場も大揺れとなった。英ポンドは対ドルで記録的安値を付け、円相場も約2年7カ月ぶりに1ドル=100円を突破。日経平均株価は一時前日終値比1300円安となった。

 今回の国民投票は、昨年5月の総選挙に際して首相が掲げた公約に基づき実施された。

 投票率は72%超、3400万票近い投票総数ながら賛否の差は約127万票の接戦。英国がEUの前身である欧州共同体(EC)に加盟した73年以降に生まれた若年層や富裕層は残留支持に回った。

 しかし、過去に郷愁を持ち、EUの権限拡大を嫌う高齢層、勤労者が離脱を支持し、階層、年齢、地域により英国が分断されていることを示した。

 キャメロン氏は週明けのEU首脳会議に投票結果を報告する。2年後をめどにEUと自由貿易、投資、金融協定を締結して巨大なEU市場へのアクセス維持を狙うが交渉難航は必至だ。英国が有利な条件で離脱すれば、反EU感情の強いデンマーク、オランダなどが離脱に傾くからだ。

 今回、人口の大半を占めるイングランドは離脱に傾いたが、スコットランド、北アイルランドは残留支持派が強かった。スコットランドでは2014年9月に英国からの独立を問う住民投票が否決された。EU残留を求めて再度の独立運動が高まれば、英国自体の分裂につながりかねない。

 投票直前には残留支持の労働党女性議員が惨殺された。英国は政治テロが極めて少なく、対話により相違を乗り越える国とされてきたが、大きな汚点を残した。

 フランス、ドイツでは来年それぞれ大統領選、総選挙が行われるが両国とも国民の間で反EU感情が高まっている。信頼回復に向け欧州各国の責任はますます重い。