【7月5日付社説】社会保障 参院選/「安心」への道筋を聞きたい

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 安倍晋三首相は社会保障改革の財源になる消費税の増税を再延期すると表明した。しかし増税を見込んだ社会保障改革はすでに動きだしている。財源の確保が遠のいたからといって、安心への道筋まで先送りするわけにはいかない。

 社会保障に関して不安を募らせる県民、国民は多い。本紙の参院選世論調査でも、投票する際に最も重視する政策として「社会保障」を選んだ人が最も多かった。これに対し各党の主張は総じて有権者に心地のいい内容で、危機感が足りないと言わざるを得ない。

 急速に進む少子高齢化で、社会保障費は国の一般歳出の半分以上を占める。今後も毎年度1兆円規模で膨らみ、団塊の世代が75歳以上になる2025年には医療費は現在の約1.4倍、介護費は約1.9倍に増えると見込まれる。

 この費用を消費税の増税で賄うという旧民主、自民、公明の3党で合意した「社会保障と税の一体改革」はいまや事実上、崩壊したともいえる。増税の延期は自民、公明の与党だけでなく、民進党など主な野党も同じ立場だからだ。

 では、10%への増税で実現するとされた充実策はどうするのか。年金では低年金者らに最大で月5000円を加算する。介護でも低所得者の保険料の軽減措置を拡大することになっている。こうした諸施策は置き去りにされたままだ。

 社会保障を立て直すためには消費税10%でも追いつかないのが実態だ。増税したとしても保険料引き上げや自己負担の増加を求めなければならないし、給付減などの効率化や重点化が必要になる。

 しかも、そうした痛みを伴う施策は、増税を延期している間も着々と進んできた。医療や介護では保険料や自己負担が増え、年金は目減り傾向が続いている。

 不安を抱くのは高齢者だけではない。現役世代も同じだ。負担増に見合う充実策や納得できるサービスが確保されなければ、社会保障への信頼は薄れ、支え合いの制度そのものが立ちゆかなくなる。

 選挙戦では増税時に予定された充実策に注目が集まっている。与党は優先順位をつけて一部を先行させる考えで、財源は税収増を充てるとする。民進党は予定通り来年4月から実施するとし、行政改革などで財源を捻出するとした。

 しかし、いずれも財源が本当に確保できるかどうかは分からない。他の各党をみても財源についてはほぼ同様だ。まるでその場しのぎで取り繕ってきた一体改革前の状況に戻ったようだ。国民の不安にどう応えようとするのか。もっと踏み込んだ論戦が聞きたい。