【7月13日付社説】南相馬の避難解除/本格復興へ新たな出発点に

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 政府は、東京電力福島第1原発事故で南相馬市小高区と同市原町区の一部に出していた避難指示をほぼ全域で解除した。南相馬市の本格復興に向けての新たな出発点にしてほしい。

 解除区域の人口は3487世帯1万807人(7月1日現在)。現行の避難区域の解除は2014年4月の田村市都路地区以降6例目となるが、対象人口はこれまでで最大規模となる。

 避難指示が解除されたのは3種類ある避難区域のうち居住制限区域と避難指示解除準備区域。事故前に1世帯2人が住んでいた帰還困難区域はまだ残るが、同市はほとんどが居住可能になり、同市にとって大きな節目を迎えた。  

 今回の避難指示解除で、1万人を超す住民が帰還できるようになったが、その動きは鈍い。  

 解除区域では、解除前に自宅に長期間にわたって滞在できる準備宿泊を昨年8月から実施してきたが、登録者は691世帯2006人(7月10日現在)と対象人口の約2割にとどまっている。

 生活インフラが震災前の水準に戻っていないことや、住宅周辺の除染は終了したものの、道路や農地の除染は来年3月までかかる見通しで、放射線への不安が拭えないことなどが背景にある。震災から5年4カ月が過ぎて、仕事や学校など避難先で生活を確立した住民も多い。避難指示解除はゴールではなくスタートだ。  

 解除区域では、政府や市が住民の帰還を促そうと市立病院を再開し、仮設商業施設を造った。きのうは震災後、運転を見合わせていたJR常磐線原ノ町―小高間が再開した。生活の足となるジャンボタクシーも解除に合わせてダイヤを改正し、利便性を向上させた。

 市は、来年4月には小高区内で小中学校を開校、18年には復興拠点施設を整備し、住民交流や商業振興を図る計画だ。生活インフラの復旧を加速させ、解除区域に戻りたい住民の帰還を後押しするための環境整備を急がなければならない。

 23日から相馬地方の夏の伝統行事「相馬野馬追」が始まるが、24日夜には祭事「火の祭」が6年ぶりに小高区で開催される。避難で失われた地域のコミュニティーを再生するには時間が要るだろうがさまざまな取り組みを積み重ね、地域の絆を取り戻してほしい。
 
 南相馬市は、政府が浜通り地方の経済復興策として打ち出している福島・国際研究産業都市構想の拠点でもある。今回の節目を契機に産業の集積を推進し、構想実現へけん引役を担ってもらいたい。