【7月15日付社説】生前退位の意向/国民全体で受け止め議論を

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 天皇陛下が、皇太子さまに皇位を譲る「生前退位」の意向を示されていることが明らかになった。

 すぐ退位しなければならない健康上の問題などがあるわけではないという。ただ数年前からこのような意向を折に触れて伝えていたとされる。憲法で定められた象徴として公務を全うできる者が天皇であるべきだとの考えという。そのお気持ちを尊重したい。

 陛下は昨年12月に82歳になり、体調に配慮して宮内庁は近年、公務を少しずつ減らしてきた。秋篠宮さまが「定年制導入」に言及されたこともある。

 しかし陛下には「活動あっての象徴天皇」との強い信念があり、国事行為や東日本大震災の被災地訪問などを精力的にこなし負担軽減には消極的だったといわれる。

 そんな中、象徴天皇としての役割や自らの身体的な衰えなどについて、いろいろ考え抜いた末に決断に至ったことがうかがえる。それだけに、この意向は重い。

 ただ皇室制度を定めた皇室典範に、生前退位の規定はない。また仮に生前退位が行われた場合、次の皇位継承者である皇太子が不在になることもあり、皇室典範の大幅な改正が必要になるだろう。

 皇位継承の在り方はこれまでにも何度か、時の政権の検討課題になったことがあったが、さまざまな事情から結論は先送りされてきた。今回の陛下の意向を受けて、静かな環境のもと丁寧に、国民全体で考え、議論をしていくことが求められる。

 陛下は国内外で精力的に公務を続けている。震災と原発事故後の2011年5月、皇后さまとともに訪れた県内の避難所で、床に膝をついて被災者に語り掛け、励ましていた姿を県民は忘れない。

 05年にはサイパン島、昨年はパラオと戦後の節目に重ね太平洋戦争の戦没者を追悼する慰霊の旅に赴いた。これ以外にも国事行為などがあり、公務は数え切れない。

 陛下は03年に前立腺がんの摘出手術、さらに12年には狭心症で心臓の冠動脈バイパス手術を受けている。これらを踏まえて宮内庁は負担の軽減に取り組んでいるが、陛下の考えもあって最小限にとどまっているのが現状だ。

 皇室を巡り過去に、女性・女系天皇の容認や「女性宮家」の創設が政府の検討課題になったことがあった。その時々の政治状況などで、いずれも実現しなかったが、生前退位の意向と、その背景にある思いにはしっかり応えるべきだ。国民は普段はあまり意識していない皇室制度に改めて向き合う契機にもなろう。