【7月16日付社説】第1原発「石棺化」/まったくあり得ないことだ

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 東京電力福島第1原発の廃炉とは、核燃料を取り出して、構造物を解体し、放射線のない土地に戻すことだ。それが県や市町村、地元住民らの共通認識だ。「石棺化」などあり得ない話だ。

 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が、第1原発の廃炉作業の新たな戦略プランを公表した。その中で、溶融燃料を取り出さず、コンクリートで原子炉建屋を覆う「石棺」方式を取り入れる可能性に言及した。

 第1原発で石棺が採用されれば、本県だけでなく日本の「負の遺産」となり風評が定着するおそれがある。国内外の英知を結集して技術を開発し、確実な燃料取り出しを目指さなければならない。

 NDFは石棺について「当面の閉じ込め確保に効果があるが、長期にわたる安全管理が困難」との考えを示し、燃料取り出しが廃炉の前提と強調する。しかし今後明らかになる原子炉内部の状況に応じ「柔軟に見直しを図ることが適切」と石棺を否定していない。

 石棺は、チェルノブイリ原発で採用されたが30年を経て老朽化し、崩落などの危険性が指摘される。このため現在、石棺を密閉する巨大シェルターが建設されている。石棺の採用は廃炉の先延ばし策にしかならない。

 避難区域では来年春までに避難指示の解除が相次ぐ見通しだ。石棺について地元首長は「帰還意欲を妨げる」「燃料を取り出さなければ、廃炉の達成とは言えない」などと反発している。内堀雅雄知事が国に抗議し、核燃料の確実な取り出しを求めたのは当然だ。

 NDFは、石棺採用の可能性について「誤解が生じている」との弁明文を発表したが、プランでの表記を変更しないままでは、廃炉方針転換への布石と疑われても仕方あるまい。林幹雄経済産業相は表現の修正を指示した。石棺をプランから削除し、今回の経過について納得いく説明を求めたい。

 第1原発では、来年夏に1~3号機での核燃料の取り出し方法が決まる予定だ。しかしその前提となる実態把握の作業では2号機だけしか溶融燃料の所在が明らかになっていない状況だ。

 廃炉には30~40年かかるとされる中、事故から5年余りで石棺という消極策が論じられることには違和感がある。燃料を取り出すには、ロボットなど新たな技術開発が欠かせない。国はそのために全精力を傾けるべきだ。NDFの主務大臣の筆頭である安倍晋三首相には「福島の復興なくして日本の復興なし」という自らの言葉をもう一度かみしめてもらいたい。