【7月21日付社説】帰還困難一部解除/地元の意見聞き前進させよ

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 東京電力福島第1原発事故による避難区域のうち、最も放射線量が高い「帰還困難区域」について、政府が一部を解除する方針を固めたことが分かった。

 除染やインフラ整備を2017年度から本格化させ、21年度をめどに徐々に解除する見通しだが、対象は役場や駅周辺など限定的な場所になるとみられる。

 解除は一部であっても帰還困難区域を抱える市町村にとっては、復興を前進させるための大きな節目となる。政府は地元自治体の意見を十分に聞いて方針に反映させていくことが肝要だ。

 帰還困難区域は、放射線量が年間50ミリシーベルトを超える地域で、立ち入りが原則禁止されている。政府・与党は、第1原発周辺の双葉町や大熊町など、帰還困難区域に設定されている7市町村と調整の上、解除を目指す地域を8月にも決める見通しだ。

 政府・与党の方針では、除染により放射線量が居住できる基準(年間20ミリシーベルト以下)に下がりそうな地域のうち、住民や廃炉に携わる関係者が居住できる地点を「復興拠点」として整備する。

 7市町村の復興計画では、大熊町が役場周辺、富岡町は住宅街があり人口が多い夜の森地区、双葉町はJR双葉駅西側を町の拠点としたい意向で、こうした場所が復興拠点の候補に挙がっている。政府は、市町村の復興計画に沿った計画になるよう、丁寧に調整を進めてもらいたい。

 帰還困難区域を解除するに当たって課題になるのは、放射線量の低減や上下水道など生活インフラの整備だ。政府は必要な費用を17年度予算に盛り込み、整備を本格化させるという。

 ただ、帰還困難区域の除染は現在、大熊町の大川原地区に隣接する同町の下野上地区などの一部で行われているほかは、双葉、浪江両町でモデル除染が行われた程度でほとんど進んでいない。地元市町村からは除染を優先すべきとの声が多い。政府は実施方針を明確に示し、スピード感を持って除染に取り組む必要がある。

 政府が避難区域で避難指示を解除する場合、これまでは避難指示解除準備区域と居住制限区域ともに、区域全体を一括して解除を行うのが通例になってきた。

 今回の政府方針では一部地域を先行させて解除することになる。自治体関係者の中には、解除される地域と、それ以外の地域とで新たな不公平感や分断を懸念する声もあるが、古里の復興を前に進ませるための一里塚として理解を得るように努めてほしい。