【7月28日付社説】魚類基準値超ゼロ/本格操業への大きな弾みに

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 本県沖の魚介類を対象に、県が東京電力福島第1原発事故後から行っている放射性物質検査で、2015年度は、採取した魚介類の全てが食品の放射性セシウムの基準値を下回った。1年間を通して基準値が下回ったのは初めて。

 県内の漁業は漁獲する魚種や操業日などを制限した試験操業が続いている。「基準値超えゼロ」を本格操業に向けた弾みにしたい。

 放射性物質検査では試験操業以外の魚種を含む8438点を検査し、全てが1キロ当たり100ベクレルの国の基準値を下回った。その上で1キロ当たり20ベクレル以下に設定される検出限界値を下回った魚種も7702点と初めて9割を超えた。

 県は、基準値を下回る魚介類が増えたことについて、放射線を出す力が半分になる「半減期」が約2年のセシウム134が力を弱めたことや、原発事故当時の魚介類が寿命でほとんどいなくなったことなどを要因として挙げている。

 事故から5年以上が過ぎて、魚介類への放射性物質の影響は少なくなっているが、気を緩めることなく検査を継続するとともに、魚介類が放射性物質を蓄えたり排せつする仕組みの解明を進めるなどして、県産魚介類の安全性の裏付けを強化したい。

 消費者庁が2月に行った消費者意識調査では、魚介類を含め食品の放射性物質検査が行われていることを「知らない人」が37%いた。13年2月は22%で、しばらくの間、25%前後が続いていたが昨年8月は35%となるなど、「知らない人」が増える傾向にある。

 県は、魚介類などの放射性物質検査について、結果をホームページ上で公表したり、産地ツアーなどを催したりするなどして、情報提供に取り組んでいる。しかし、その情報がしっかり消費者に届いていない可能性もある。魚介類の「基準値超えゼロ」を含めて、国内外に情報が確実に伝わるよう情報発信力を強めていかなければならない。

 県漁連は、これまで試験操業の対象外としていた第1原発から半径10~20キロ圏内にも漁場を拡大することを検討している。8月からは同海域の漁場整備に向けて、海中の災害がれきの回収を始める。

 放射性物質検査では、20キロ圏内の魚介類からも昨年4月以降、基準値を超えるセシウムが検出されていない。

 本県の漁業を再生への軌道に乗せるためには、きれいな海の回復を着実に進める必要がある。東京電力や政府には、その妨げとなる汚染水漏れなどを起こすことがないよう改めて求めたい。