【8月9日付社説】陛下「お気持ち」表明/国民的な議論につなげよう

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 「生前退位」の意向を持たれている天皇陛下が、自らのお気持ちをビデオメッセージで国民に伝えられた。「天皇は国政に関する権能を有しない」とする憲法の規定があり、退位や皇室典範の改正に言及こそしなかったが、象徴天皇のあるべき姿について語る中で率直な思いを表し、理解を求めた。

 陛下は、「多くの喜びの時、また悲しみの時を、人々と共に過ごして来ました」と、28年の在位を振り返り、「とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私は天皇の象徴的行為として、大切なものと感じて来ました」と語った。その上で、高齢化に伴う公務の縮小について「無理があろうと思われます」との考えを明らかにした。

 「象徴としての地位と活動は一体不離」と周囲に話してきたとされ、それを言葉を尽くし分かりやすく説いた形だ。生前退位については本紙が加盟する共同通信の世論調査で約86%が容認している。今回のお言葉で好意的な受け止めがより広がることを期待したい。

 生前退位を実現するには皇室典範の改正や特別立法が必要になる。政府は、お言葉を受け今後、本格的な議論に入る。皇室制度を変えるのは容易なことではないが、できるだけ早く方向性を定め、国民的な議論につなげてほしい。

 82歳になり、狭心症で心臓の冠動脈バイパス手術なども経験し、将来的に思うように体を動かせなくなれば象徴として、ふさわしくないと陛下は考えているようだ。

 大規模災害では皇后さまとともに被災地に足を運び、膝を折って人々の声に耳を傾けた。東日本大震災後の本県訪問だけでも5回に及ぶ。そして高齢者や障害者に寄り添い、戦没者の慰霊にも心を砕いた。それが陛下にとって象徴のあるべき姿であり、宮内庁による公務の削減に難色を示してきた。

 その姿を受け入れてきた国と国民が今度は、陛下の意向を後押ししなくてはなるまい。

 皇室典範には生前退位に関する規定が置かれていない。皇位継承への政治的干渉や皇室内の争いを避ける意図があったとされる。典範改正ではなく一代限りの特別法で対処しても、同じ懸念は残る。

 また、天皇の公務などを代行する「摂政」の制度もあるが、陛下はお言葉の中で「天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません」と述べている。

 退位を認める主体や基準など課題もあり、政府には綿密な検討が求められよう。国民の総意を反映させることも忘れないでほしい。