【8月11日付社説】山の日/恵みを再認識して次世代に

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 きょうは「山の日」。新しい国民の祝日だ。国土の7割、県土の8割が山地という自然環境を再認識し、次世代に引き継いでいくことの大切さを考える日にしたい。

 祝日法は、山の日の意義を「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」と定めている。

 当初は多くの山々が山開きを行う6月に設ける案があったが、教育界や経済界が、新たな休日を増やすことに難色を示したため、影響が少ない8月の旧盆前で落ち着いた。祝日は年間16日になり、祝日がない月は6月だけとなる。山の日の誕生を契機に、山への関心が高まることを期待したい。

 山は日本人の文化や生活様態に深く関わってきた。例えば春の初め、雪解けが進むにつれて山肌に現れる吾妻山の「種まきうさぎ」など雪形は農作業を始める目安となるが、それは古里の山に刻んだ人々の「暦」でもあった。

 山はさまざまな恩恵を与えてくれる。人や動物たちが命を育むために欠かせない水や酸素の供給源であり、森林は木材を産出し、湧き水や地下水は田畑を潤してきた。そして国土を災害から守る「緑のダム」の役割も果たしている。

 県内には775の源泉と134の温泉地があり、全国有数の温泉県となっている。それは県内に五つある火山の恵みでもある。山間の秘湯や昔ながらの湯治場、旅の拠点となる観光温泉、さらには立ち寄り湯まで、多様性に富む温泉の数々が心身を癒やしてくれる。山に感謝するとともに、山との共生を誓う日にもしたい。

 山の日といえば、登山や山歩きを思い起こす人が多いだろう。1980年代に始まった中高年の登山ブームは今も続き、「山ガール」に代表される若者、さらには外国人観光客も四季折々に美しい山々を巡るようになった。

 一方で遭難事故が増えている。県内で昨年発生した山岳遭難事故は82件95人で、前年を30件37人も上回り、2003年以降で最多となった。遭難者のうち中高年が8割を超える。遭難事故は全国的にみても急増している。

 夏雲を背にそびえる峰や深緑、高山植物の花々など山は人を引き寄せる魅力にあふれる。半面、天候が崩れれば命の危険に直結しかねない場所でもある。山をおそれる気持ちを忘れず、準備と装備を万全にして登山を満喫したい。

 本格的な登山でなくても構わない。自宅近くの里山を散策するのも楽しい。出掛けられない場合は窓から緑濃い山々を眺めるだけでもいい。古里や本県の山の魅力を再発見する日にもしたい。