【8月12日付社説】甲状腺検査/より良い体制へ徹底議論を

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 原発事故に伴う県民健康調査の進行管理などを担っている「県民健康調査検討委員会」の星北斗座長は福島民友新聞の取材に対し、甲状腺検査の対象者縮小や検査方法の見直しを視野に入れた議論を検討委で始める方針を示した。

 甲状腺検査は、原発事故発生時に18歳以下だった全ての県民を対象に、放射線の健康影響を調べているが、検査の在り方についてはさまざまな意見がある。検査のメリットとデメリットを総点検し、県民にとって最善の検査体制を再構築すべきだ。

 甲状腺検査は、約38万人を対象にこれまでほぼ2年に1度行われ、2巡した。その結果、3月末現在で173人ががんやがんの疑いと診断され、このうち131人ががんと確定している。

 検討委は、これらの結果について地域別の発生率に差が見られず、年齢分布も特異な点がなかったこと、さらには被ばく量がチェルノブイリ 原発事故と比べてはるかに少なかったことなどから「放射線の影響は考えにくい」と評価している。

 甲状腺検査を巡っては原発事故から5年がたっても、保護者らの放射線への不安が根強く、検査を希望する人は多い。検討委も県内で見つかっているがんが原発事故の影響でないという確かな根拠を得るためにも検査を続ける必要があるとしている。

 これに対して、県内の小児科医でつくる県小児科医会(太神和広会長)は先月、甲状腺検査の在り方を再検討するよう求める声明を発表した。

 声明は、甲状腺がんは進行が遅く、予後が良いため一律の検診で早期にがんを見つけてもメリットが少ない上、がんと診断されることで病気に対する不安などのデメリットが生じると指摘し、全県民対象の進め方の見直しを求めている。星座長の検討委での議論着手の方針はこうした動きなどを踏まえたものとみられる。

 2011年10月に甲状腺検査が始まってから間もなく5年。がんやがんの疑いと診断された子どもたちに対する放射線への影響を示す確かな証拠はない一方で、放射線の影響がないことを示す確かな証拠もまたない。

 検査は、県民の不安を解消し、健康を保つために必要だが、マイナスに作用するようなことは避けなければならない。

 本県の未来を担う子どもたちの健やかな成長に向け、より多くの人々が得心できるような検査の在り方を見いだすためにより深く実のある議論を求めたい。