【8月19日付社説】「給付型」奨学金/学び支援へ改革の第一歩を

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 家庭の経済事情によらず、若者が学費の心配をしないで大学で学ぶことができるようにするためには経済的支援の拡大が必要だ。財源の手当てなどの課題はあるが、早期の実現に努めてほしい。

 文部科学省は、大学生らを対象にした返済の必要がない「給付型奨学金」の創設に向けて制度設計の検討を進めている。

 給付型奨学金の導入は1億総活躍プランに盛り込まれている。文科省は2018年度の進学者からの給付開始を目指しており、年末の予算編成で、予算規模や対象人数などの結論が出る見通しだ。

 奨学金を利用する学生の割合は年々上昇し、最近は2人に1人が奨学金に頼っている。授業料が高騰する半面、経済の長期低迷で家庭の平均収入が減少してきたからだ。一方で、卒業後に返済に苦しむ人が多く、給付型奨学金の制度化を求める声が高まっている。

 日本の公的な奨学金制度は、一部の地方自治体などを除けば、返済が必要な貸与型だ。多くの学生が利用している日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金は、有利子と無利子の2種類あり、有利子枠が7割近くを占める。実態は「教育ローン」といえる。

 同機構は無利子枠の奨学金の拡大を進めるとともに、卒業後の所得に応じて返済額が異なる「所得連動型」の奨学金を17年度から導入して負担軽減を図るが、それでも給付型奨学金との差は大きい。卒業後は奨学金の返済に苦しむ例が多い。14年度に同機構の奨学金を滞納した人は約33万人に上る。

 家庭の収入が少ないほど大学進学率が低くなることが知られている。ほとんどが貸与型の奨学金制度に、その現状を改善する力はない。経済力の有無によって教育の機会均等が左右されることがあってはならない。「貧困の連鎖」を断ち切るためにも、奨学金制度の充実を、教育行政上の最重要課題の一つとして位置付けるべきだ。

 ただし、給付型奨学金の実現に向けては、いくつかの大きな課題があり楽観できない。まず財源をどう確保するか。厳しい国家財政を考えれば、財政当局は簡単には支出拡大を認めまい。対象者をどう選定するかも難しい。文科省はできるだけ早く具体案を示し、広く議論を起こしてほしい。

 日本は教育への公的支出が極めて低いが、学ぶ意欲を持った若者への支援は、必ず社会に利益をもたらす長期の投資と考えるべきだ。給付型奨学金も、まずはできる範囲で始めてはどうか。とにかく改革に向けての第一歩を踏み出すことが肝心だ。