【8月21日付社説】児童虐待/根絶へ兆し見逃さぬ体制を

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 児童虐待が増加の一途だ。社会全体が危機感を持って防止策に取り組み、子どもたちを虐待から守らなければならない。

 県によると、2015年度に県内4カ所の児童相談所(児相)が対応した児童虐待の件数は、前年度に比べて135件増の529件に上り、集計を始めた1990年度以降で最多となった。

 言葉による脅しや無視などの「心理的虐待」が急増し、半数近くを占めた。子どもの前で配偶者らに暴力を振るう「面前DV(ドメスティック・バイオレンス)」を心理的虐待と捉え、児相に警察が通告する事案が増えているという。子どもに危害を加える「身体的虐待」と、育児を放棄する「ネグレクト」がそれぞれ約25%あり、「性的虐待」が続いた。

 専門家によると、子どもが面前DVに接した場合、トラウマを持つようになったり、性格が暴力的になったりする可能性があるという。虐待といえば、子どもが親らから直接、暴力を振るわれることを想起しがちだが、面前DVへの対応という新たな課題が突き付けられている。

 増え続ける児童虐待に対応するためには、一層の相談体制の充実が求められる。特に、児相での養育相談や家庭環境の調査などを行う児童福祉司ら専門職の十分な確保が急務だ。

 県内では現在、4児相に児童福祉司が41人配置されている。東日本大震災前の2010年度よりは9人増えたが、虐待の件数も震災前の約2.3倍に増えており、児童福祉司1人当たりの負担は確実に重くなっている。虐待の防止や解消に向けてきめ細かく対応するためには専門職の増員や対応力の向上が求められる。

 ことし5月には、児童福祉法と児童虐待防止法が改正され、来年度から各市町村にも児童虐待に関する専門職の配置が義務付けられることになった。市町村と児相が連携して虐待の"芽"を初期の段階で摘み取ることが重要だ。

 虐待を未然に防ぐための方策にも力を入れたい。県は今年から検診で産科を訪れた妊婦に、子育てへの不安や悩みなどを聞くアンケートを行っている。虐待につながるような兆しがあった際は、関係機関や市町村と情報を共有し、保健師を家庭に派遣して相談に応じるなど的確な対応を取るよう望みたい。

 虐待を巡っては、近所の目配りが早期対応につながり、子どもが救われるケースもあった。行政だけでなく学校や地域など総力を挙げて根絶に取り組みたい。