【9月2日付社説】「帰還困難」復興方針/全面解除への確かな一歩に

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 政府は、決定した基本方針を道しるべに最後まで責任を持って帰還困難区域の復旧と再生に取り組まなければならない。

 政府が東京電力福島第1原発事故による帰還困難区域に関する基本方針を決めた。除染とインフラ整備を国が一体的に行う「復興拠点」を市町村ごとに設け、5年をめどに避難指示解除を目指すことなどを柱にしている。

 政府は帰還困難区域以外の避難指示について2017年3月までに解除する方針を示していたが、帰還困難区域への対応は決まっていなかった。原発事故から5年半を要しての方針決定だが、帰還困難区域の再生に向けた大きな一歩として捉えたい。

 帰還困難区域は、3種類ある避難指示区域のうち放射線量が年間50ミリシーベルトを超え、立ち入りが原則禁止されている区域で、第1原発周辺と北西部の7市町村に広がる。事故前の区域内人口は約2万4000人。面積は約337平方キロ。

 復興拠点は市町村が県と協議した上で整備計画を作成。国が関連する法制度を整えて、計画を認定する。安倍晋三首相は方針を決めた会合で「帰還困難区域の復興に一日も早く着手する」と述べた。関連法案の次期通常国会への提出や17年度からの必要な予算措置などを着実に進めてもらいたい。

 帰還困難区域の避難指示を解除するに当たって課題になるのは、放射線量の低減や上下水道など生活インフラの整備だ。方針では、復興拠点以外でも主要道路などの除染や、市町村の伝統や文化を象徴する交流拠点の整備を、地域の実情に応じて支援する―とした。

 解除は一部であっても市町村にとっては、復興を前進させるための大きな節目となる。一方で、事故から5年半がたち、市町村によって復興状況に差が出ている。また帰還困難区域が自治体の一部にすぎないため復興拠点の整備が難しいところもある。政府は自治体の意見を十分に聞きながら柔軟に対応することが肝要だ。

 基本方針では、「将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意」と述べた上で、「政府一丸となって、帰還困難区域の一日も早い復興を目指して取り組んでいく」と明記したが、具体的な道筋やそれにかかる年月は示していない。

 政府は、この「決意」を今後どのように具現化させていくのか。市町村にとっても避難している住民にとっても将来を決する重大な事柄であり、政府はできるだけ早く明らかにする必要がある。