【9月4日付社説】尾瀬学術調査/世界に誇る「宝」守り後世に

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 本州最大の高層湿原が広がり、貴重な生態系を有する尾瀬は、世界に誇る宝だ。その現状を正しく捉え、尾瀬を守り後世に残していかなくてはならない。

 尾瀬保護財団(理事長・大沢正明群馬県知事)が2017年度から3年間、本県、群馬、栃木、新潟の4県にまたがる尾瀬国立公園で第4次総合学術調査を行う。

 尾瀬では、尾瀬で発見された原産植物や、尾瀬でしか見られない特産種など900種類を超える高等植物が生息している。これらを育む湿原や沼沢地、干潟などは、多様な生態系の微妙なバランスの上に成り立っているとされる。

 しかし近年、地球温暖化やニホンジカの侵入による生態系への影響が懸念されている。保全に向けた対策を急ぐ必要がある。

 湿原を守るためには現状を的確に把握することが必要だが、湿原に生息する動植物の分布を調べる基礎的な調査は1950~52年ごろの第1次調査以来行われていなかった。このため、過去の分布状況と比較できる科学的な情報が限られ、有効な保全策が打ち出しにくくなっていた。

 今回の調査では、65年ぶりに基礎調査が行われる。大学教授らによる調査団が、生息する動植物のリストを作成したり、小型無人機「ドローン」を使って上空から植生分布を調べる。ニホンジカによる被害などについても詳しく調査する。その結果を踏まえ、尾瀬を守るために必要な対策や、将来を見据えた持続的な調査体制を確立しなければならない。

 併せて重点研究も行われる。温暖化が湿原の生態系にどのような影響を及ぼすかという将来予測を行ったり、予測に応じて適切に湿原を管理していくための方策を検討する。高層湿原の乾燥化の要因とされる地下水の動向や、気象変化などの影響を解明してほしい。

 尾瀬保護財団は、研究者だけでなく、広く一般にも調査の成果を公開する予定だ。その一部は、撮影した動画や画像をインターネットで公開する。

 尾瀬が国立公園に指定されて来年で10年になる。ミズバショウの群生や、草紅葉など四季折々の豊かな自然を楽しむために、年間30万人を超えるハイカーらが訪れている。しかし同財団は、尾瀬の自然について社会の理解が十分でないとの認識を示している。

 尾瀬は、ダムや道路の建設を中止させたり、ごみの持ち帰り運動が行われるなど、自然保護運動の発祥の地だ。尾瀬を利用する側も、調査を改めて自然保護を考え、行動するためのきっかけとしたい。