【9月6日付社説】楢葉避難解除1年/復興モデルへ確かな歩みを

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 避難指示が全町単位で解除された自治体のトップランナーとして復興のモデルとなるよう着実に歩みを進めてもらいたい。

 楢葉町は昨年9月、ほぼ全域が避難指示の対象となった7町村のうち初めて解除された。それから5日で丸1年となった。

 今月2日時点で町に戻った住民は376世帯、681人で、人口に占める割合は1割弱に満たず、65歳以上高齢者が半数を超える状況だ。しかし帰町者はわずかずつだが増えている。町が「帰町目標」として掲げる来年春に向けて課題を確実に解決していってほしい。

 住民を迎える生活インフラは徐々に整いつつある。医療関係は今年2月に県立診療所が設立されるなど三つの診療所が開かれた。災害公営住宅や商業施設などを集めたコンパクトタウンも建設される。商業施設は出店調整が長引き完成は2018年春になりそうだが、拠点となる施設であり整備を最優先で進めるべきだ。

 町商工会によると会員事業所251社のうち、震災後に地元で事業を再開したのは約4割の104社。建設業などが中心で、小売業やサービス業など毎日の暮らしに関わる業種はまだ多くない。

 事業の再開は、雇用の場の確保につながり、住民の帰町意欲を高め、決断するきっかけにもなる。町に活気を取り戻すためには若年層の帰還が一つの鍵となる。地元企業の事業再開も加速させていかなければならない。

 原発事故前、町内のコメの作付面積は約410ヘクタールで、約440軒あった農家のほとんどがコメ作りをしていた。しかし今年コメを作付けしたのは14軒で面積は20ヘクタール程度にとどまる。基幹産業だった農業の再生にも全力を挙げたい。

 小中学校とこども園も来年春に再開される。町教委によると通学を希望している児童生徒は80人前後だが、昨年7月時点に比べ倍増した。子どもたちや子育て世代が戻ることで町の様子も大きく変わるだろう。放射線対策も含めて不安なく通学できるような体制を整えていきたい。

 新しい住民を含めたまちづくりにも取り組んでほしい。震災後、町に進出した企業は4社あり、福島・国際研究産業都市構想に関わる施設で働く人たちもいる。いわき市などからの通勤ではなく町をベースに生活できるよう住宅の整備や教育面の充実が求められる。

 原発事故から5年半、帰町を目指す人もいれば、他地域での暮らしを選ぶ人もいる。それぞれの選択が大切にされてこそ、町の復興も、一人一人の復興も進むはずだ。