【9月9日付社説】子どもの自殺/SOS見逃さない安全網を

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 SOSを見逃さないために何ができるのか。学校側の役割は大きいが、限界もある。民間団体などの協力も得ながら地域の安全網づくりに力を入れたい。

 名古屋市で起きた中学1年男子生徒の自殺を巡り、同市教育委員会の第三者機関「いじめ対策検討会議」が検証結果を公表した。

 男子生徒は学校や部活でいじめを受け、昨年11月に「もう耐えられない」との遺書を自宅に残し、地下鉄の電車に飛び込んだ。検討会議はいじめを認定。嫌がらせを深刻にとらえないなど、学校側の対応に瑕疵(かし)があったとした。

 2013年に施行された「いじめ防止対策推進法」では、重大な事案があったときに教育委員会や学校の下に第三者機関を設けて調査し、被害者側に適切な情報提供をすることが義務付けられた。児童生徒の自殺については学校が即日背景調査に着手し、全教員から聞き取りを行うとする指針も文部科学省から出ている。

 青森県で中2女子がいじめを訴えて自殺した問題でも青森市教委が第三者機関を設け調査する。このような調査で事例を蓄積して原因を分析し、対策を練るのは重要なことだ。しかし名古屋の事例も含め調査のたびに、いじめの事実が次々に報告され、どこかで子どもたちのSOSに気付き、自殺を防げなかったかと悔やまれる。

 この検証結果が公表される直前には青森県で、中2女子だけでなく中1男子も自殺した。いずれのケースも親から嫌がらせについて相談を受けた学校側は、他の生徒から聞き取りをしたり注意したりしたが自殺を防ぎきれなかった。

 自ら命を絶つ児童生徒は年間300人を超える。政府の15年版自殺対策白書は、18歳以下の自殺について、過去約40年間のデータを基に、夏休み明けの9月1日に急増しているほか、春休みなど長期休暇明けに増えていると指摘し、「生活環境が大きく変わり、精神的動揺が生じやすい」などと分析している。

 また、「10代前半の自殺は、事前に予兆がないことが多い」とした。名古屋市の中1男子自殺では検討会議側が「亡くなった生徒の心の内は調べても、調べきれるものではない。限界を感じている」と述べており、学校側の対応が追い付かない部分はどうしてもある。

 県内でもNPOなどが、子どもたちに「駆け込み居場所」を提供したり、電話相談に応じたりしている。身の回りにさまざまな相談の受け皿があることを伝え、気軽に悩みを相談できるような態勢を充実させることが重要だ。