【9月11日付社説】甲状腺がんと放射線/研究進め関連の有無立証を

(数字はいいね)  このエントリーをはてなブックマークに追加 

 福島医大の研究チームが原発事故による外部被ばく線量の程度と、事故当時18歳以下だった全ての県民を対象にした県の甲状腺検査で甲状腺がんが見つかった人の割合(有病率)との間に関連は見られないとの論文を発表した。

 研究結果は、甲状腺がんと原発事故との関連性について、「関連なし」という一つの裏付けを示した形だが、確証とは言えない。さらに研究を進め、関連性の有無を立証しなければならない。

 研究チームは、2011年10月から15年6月に1巡目の甲状腺検査(先行検査)を受けた約30万人の受診結果を分析した。県内を外部被ばく線量の程度で地域分けして、それぞれの地域の有病率を比較した。

 分析によると、10万人当たりの有病率は、最も被ばく線量が高い地域が48、最も低い地域が41、中間に当たる線量の地域が36で、地域による違いが見られなかった。個人の外部被ばく線量と有病率の関係を調べた分析でも、関連は見られないとした。

 論文は、原発事故後4年間の受診データを分析した研究結果だ。事故による放射線の子どもの健康への影響を調べるには、年齢を重ねるごとに受診結果を比較しながら、変化を確認することが重要となる。検査を通じて追跡調査を進めていきたい。

 研究チームは、世界保健機関(WHO)が内部被ばく線量を考慮して推計した被ばく線量に基づき分類した地域の有病率を比べ、原発事故との有意な関連が見られなかったという結果も得た。

 県は、甲状腺検査の結果を基に避難指示が出た市町村や中、浜通り、会津に分けた地域比較などで「放射線の影響とは考えにくい」と判断してきた。研究チームは別角度による研究でその判断を裏付けた。検査データは研究者らに公開される予定で、多角度の詳細な研究を進めることが求められる。

 チェルノブイリ原発事故に伴う甲状腺がんでは、事故当時0~10歳の子どもは、発見のピークが7年後だったという報告がある。このため、県は甲状腺検査を継続し、県内の子どもたちの健康を見守っていくことが重要だ。

 東日本大震災と原発事故から5年半となった。甲状腺検査を巡っては、事故当時18歳以下の全県民を対象に検査を続けることを望む意見と、希望者などに対象を縮小すべきとする意見が先月、県に提起された。県は県民健康調査検討委員会で慎重に議論を進め、県内の子どもたちにとって最善の検査体制を構築しなければならない。