【9月21日付社説】養育費不払い/泣き寝入りしない救援策を

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 養育費や犯罪賠償金が支払われず泣き寝入りしている人を救うために制度の導入を急ぐべきだ。

 民事裁判で支払い義務が確定した子どもの養育費や犯罪被害者への賠償金が支払われないケースを減らすため、法務省が支払い義務がある人の財産差し押さえが容易になる制度の強化に乗り出す。

 新制度の柱となるのは、裁判所が金融機関に預貯金口座の有無を照会して、支店名や残高を回答させるという仕組みだ。

 現行制度では、裁判所が支払い義務のある人(債務者)の口座を差し押さえる場合、支払いを受ける権利のある人(債権者)が自力で金融機関の支店名まで特定する必要がある。新制度では、債権者が金融機関名さえ挙げれば、裁判所に申し立てできるようになる。

 法相が制度設計について法制審議会に諮問した。法務省は早ければ2018年の国会に民事執行法改正案を提出する考えだ。

 厚生労働省の11年の全国調査では母子家庭のうち、養育費を継続的に受給できているのは約2割にとどまっている。養育費相談支援センター(東京)には昨年度、不払いの相談が約千件寄せられるなど問題は深刻といえる。

 新制度は離婚後、養育費不払いで経済的に苦しくなる母子家庭にとって一歩前進となる。しかし、欧米の多くの国では行政機関が代わって取り立てる制度が整備されており、養育費の不払い自体に罰則が設けられている例もある。より幅広い救済策になるよう制度づくりに腐心することが必要だ。

 養育費の不払いは母子家庭を困窮させる要因となり、子どもの貧困に直結する。県は本年度、子どもの貧困に関する初の実態調査に取り組んでいる。新制度の行方と調査結果を踏まえて、子どもたちのために県としてもできる限りの支援策を講じてほしい。

 新しい制度は、犯罪賠償金の不払いにも適用される。法的義務に背を向けて不払いを続ける債務者に、確実に支払いをさせるのは容易ではない。被害者が死亡した事件で、被告に賠償請求できる「損害賠償命令制度」を利用して確定した賠償額のうち、支払いが確定したのは全国で2%以下という。

 裁判手続きの後、強制執行の動きを察知して意図的に口座を移すような債務者にどう対応するか。天引き方式で支払いをさせるため、裁判所が給与情報を開示させるような仕組みを求める声も強い。差し押さえという強制措置と個人情報保護とのバランスを取りながら実効性を担保する制度にすることが求められる。