【9月23日付社説】農林業の賠償/欠かせぬ自立支援策の充実

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 東京電力福島第1原発事故で被害を受けた農林業者が自立するためには、損害への適切な賠償とともに、生産再開や持続的な営農に向けた施策の充実が欠かせない。

 東電が、原発事故による農林業者への来年1月以降の損害賠償について損失(年間逸失利益)の2年分を一括賠償する素案を示した。一律での賠償は2018年で打ち切る方針で、19年以降は、損害の状況に応じた個別対応に移行するという内容だ。

 賠償額算定の基準となるのは、避難区域内の賠償額は原発事故前の利益分で、それ以外は事故前と今年の利益の差額分。出荷制限指示の対象品目を生産していた場合は区域内と同じ基準を採用する。

 農林業の営業損害の賠償は請求期間が今年12月末までとなっており、来年1月以降の枠組みははっきりしていなかった。素案提示で前進した形だが、農業団体からは19年以降の個別対応分などについて算定基準が示されていないことなどから懸念の声が出ている。東電は関係団体の意見を丁寧に聞いて素案内容を検討し賠償方針を決めていく必要がある。

 原発事故の影響で営農休止を余儀なくされた16市町村の農地1万7700ヘクタールのうち、再開は3月末現在で3200ヘクタールにとどまっている。農林業者は避難指示解除後の再開を目指す人がいる一方で、先行きが見通せずに再開するかどうか悩む人がいるなどさまざまだ。

 早期の営農再開に向けた支援策などを盛り込んだ与党の復興加速化の6次提言では、個々の農業者向けの支援や木材の需要拡大などを政府に求めている。東電では6次提言を踏まえたとしている。

 これらを踏まえ、政府と県は、避難指示が出された12市町村で営農再開する農家に対し、農業機械の購入などの資金のうち4分の3を補助する制度を用意する。

 さらに個別農家の状況に対応した支援メニューを充実し、営農再開を後押ししなければならない。

 個別農家への対応は、東電も参加する福島相双復興官民合同チームがその役割を担っているが、まだ十分とは言えない。農家を将来を見通せるよう、経営計画の作成などにも支援を強化すべきだ。

 避難区域以外の農林業者も原発事故の影響を受けている。風評被害も続いており、価格は震災前の水準に戻っていない。14年の産出額は事故前と比べて農業は79%、林業も75%の水準だ。

 政府は、県産品の安全性の発信だけでなく、販売拡大に目を向けた対策の構築など、風評被害対策にも力を入れなければならない。