【9月29日付社説】風評・風化対策/戦略の実効性上げ定着防げ

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 東日本大震災と原発事故から5年半が過ぎたが、いまも本県にとって風評の克服は大きな課題だ。実態を見極めながらこれまでの取り組みを検証し、より実効性のある対策を講じなければならない。

 県が「風評・風化対策強化戦略」を改定した。昨年9月の戦略策定から1年が経過したことから、県産品の販路回復・開拓や観光誘客の促進、教育旅行の回復など七つの柱について新しい取り組みを盛り込んだ。

 県産農産物の価格や観光客数はこれまでに一定の改善が見られるが、震災前の水準まで戻っていない。さらに今後は時間の経過とともに風評が払(ふっ)拭(しょく)されないまま定着してしまうことが懸念される。

 特に農産物は市場での評価が回復せず、苦戦を強いられている。県などによると、県産米は原発事故の影響で、これまで家庭用として販売されていたものが業務用として扱われるケースが増えたことで取引価格が低くなった。モモも震災前に比べ、他産地のものに比べて取引価格が安くなっているという。

 その背景について、JAふくしま未来の菅野孝志組合長は「風評で下落した価格が固定化されて取引されているためではないか」との見方を示す。その上で「質の高い県産農産物が適正な評価を受けず、安く買いたたかれているという流通構造が続けば、農家の意欲が下がってしまう」と憂慮する。

 県の農産物の風評対策はこれまで、消費者を対象にした店頭フェアなどが多かった。しかし、今回改定した戦略では、量販店や流通業者向けの商談会や訪問を強化する方針を掲げた。徹底した放射性物質検査を行い安全を確保していることをアピールし、評価の回復につなげなければならない。

 観光誘客では、本県が復興へと歩む姿を国内外に発信する「ホープツーリズム(希望の観光)」の推進や、訪日外国人の誘客策の強化を図る。教育旅行の誘致に向けては、県外の学校に対して本県への教育旅行の意向調査を行う。

 風評対策は、県産品や観光を組み合わせ、総合的に取り組んでいくことが重要だ。県産品の安全性とおいしさへの理解が広がることで、それに伴い観光も回復していくような好循環を生み出す対策が求められる。

 県によると、震災直後は本県への関心度は全国で5割近くあったが、今年8月時点では4割強まで低下している。

 本県の現状と復興の取り組みを広く発信し、共感と応援の輪を広げていくことが重要だ。