【9月30日付社説】働き方改革/柔軟で多様な環境づくりを

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 少子高齢化・人口減少時代に経済を進展させていくためには、働く人の視点に立った柔軟で多様な労働環境づくりが必要だ。

 安倍晋三政権の最重要課題の一つである「働き方改革」の本格的な議論が始まった。長時間労働を是正するための残業規制強化やパートなど非正規労働者の処遇改善などが柱で、来年3月をめどに実行計画をまとめる。

 「大切なことはスピードと実行だ。もはや先送りは許されない」と安倍首相は初会合で強調した。アベノミクスの失速が指摘される中、目玉政策とする働き方改革を実現するためには実効ある施策と全体像を示すことが求められる。

 最大の課題は長時間労働の是正だ。日本で働く人の2014年の労働時間は平均1729時間。ドイツやフランスは300時間前後少ない。長時間になりがちな働き方が育児や介護など生活との両立を妨げ、女性や高齢者が働き続けることを阻害したり、少子化や生産性の低下につながったりしているといわれている。

 長時間労働是正に向けての焦点は労働基準法が定めた残業に関する労使協定(三六協定)の見直しだ。現在は労使が合意すれば事実上残業が無制限となるため、上限の設定を検討する。長時間労働を抑制するためには有効な措置だろう。自民党内には超過した場合の罰則を求める声も出ている。

 正社員と非正規との不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」も目が離せないテーマだ。

 有効求人倍率や失業率は改善したものの雇用の受け皿は依然、低賃金の非正規頼みの状態だ。非正規雇用は労働者全体の約4割を占めている。非正規の賃金が底上げされれば、消費が拡大し経済を押し上げる。待遇改善が急務だ。

 厚生労働省は、どのような格差が不合理に当たるかを示す企業向けの指針を年内に策定する。関係法の改正も視野に入れている。

 一方で、同一労働同一賃金は言葉が曖昧な上、日本では職務内容だけでなく能力や成果への対価として給料を支払う「職能給」制度を導入している企業が多い。労働慣行にメスを入れるのは容易ではない。政府の本気度が問われる。

 政府は1人当たりの生産性の向上が経済成長に不可欠だとしている。それには仕事と生活が両立できる柔軟な働き方を可能とする環境整備も大切だ。

 ITを活用して在宅勤務をするテレワークの拡大や、がんなど病気の治療と仕事が両立できる環境整備など、時代のニーズに合った改革にも積極的に取り組みたい。