【10月4日付社説】老舗蔵元再出発/伝統生かしブランド発展を

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 本県を代表する老舗ブランドを着実に再生してもらいたい。

 約300年の歴史を持つ花春酒造(会津若松市)が酒造事業を新会社に譲渡する形で再出発した。

 花春は1718(享保3)年の創業。かつては普通酒(従来の二級酒)で県内トップのシェアを持ち、ピーク時の1978年には売上高37億円を誇った。

 しかし近年は、普通酒よりも吟醸酒など「特定名称酒」が好まれる傾向にあることに加え、東京電力福島第1原発事故の風評被害もあり売り上げが減少。時代に即した業態改善ができず債務超過となって自力での再建を断念した。

 新会社は、会津若松市出身で幸楽苑ホールディングス社長の新井田傳氏が社長に就いた。「花春」ブランドと社員の雇用を承継する。新体制が一日も早く軌道に乗ることを期待したい。

 日本酒を巡る状況は、消費者の嗜好(しこう)の多様化や若者の酒離れなどで変化している。国税庁によると日本酒の消費量は1998年は100万キロリットルを超えていたが、2014年には55万7000キロリットルまで減少した。県内も同様だ。

 日本酒の消費量が減る一方で、味わいを追求する傾向が強まっており、普通酒が主力だった蔵元は価格競争もあって苦戦を強いられている。榮川(えいせん)酒造(磐梯町)も今年、政府系ファンドの再生支援を受けて、東京の食品関連会社の傘下に入った。業界で生き残るためには、消費者に選ばれる酒づくりが最優先課題となる。

 県産清酒は、新酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会で、最高賞の金賞受賞数が都道府県別で4年連続で日本一に輝くなど高い評価を受けている。「民」と「官」が協力し合い、品質向上を目指した努力が実を結んだ。

 この結果、県産酒のイメージは急速に向上しており、本県の取り組みを参考にして酒づくりを目指す動きが他県で出てきている。評価を確かなものにし、大消費地である首都圏などでの知名度向上を図っていくことが求められる。

 販売先は国内だけではない。世界では日本酒が人気を集めている。国税庁によると日本酒の輸出額は05年は約53億円だったが、15年には約140億円と約2.6倍の規模になった。

 和食ブームを背景に、香り高い吟醸酒の登場や、ウェブサイトによる英語での情報提供などが日本酒人気を後押しているようだ。

 会津の老舗ブランドの復権はもちろん、県内の酒造業界がさらに飛躍するために、知恵と工夫を凝らしてほしい。