【10月5日付社説】病床数の削減/地域の実情に即した構想を

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 県内の医療体制の整備方針を示す「地域医療構想」の年内策定を目指す県は、2025年に必要な県内病院のベッド(病床)数について13年に比べ27%少ない1万5397床とする推計をまとめた。

 県の推計は、政府のガイドラインに基づき行われ、政府が病床数の削減による医療費の抑制を狙い昨年示した試算値とほぼ合致する。医療費抑制の必要性は理解できるが、地域の実情を応じて受け皿を整えなければならない。

 推計によると、県内は人口減少が進む一方高齢者が増えるため、25年の入院患者数は1万3048人となり、13年に比べ6%増える。

 患者が増えるにもかかわらず、病床数は減少する形だが、県は「現状でも全ての病床が稼働しているわけではない」とし病床が減っても十分対応可能とする。

 確かに13年の病床数に占める入院患者数の割合は約58%だった。医師らが不足して入院患者の受け入れを中止する病院があるためだ。推計に基づき病床を減らした場合でも25年は計算上85%となり数字上は余裕があることになる。

 県内では、病院や医師が主に都市部に偏在し、医療に対する患者のニーズも地域ごとに異なる。病床の利用状況には、急性期の患者が入院する一般病棟を療養病床代わりに使うなどばらつきがある。県はこうした病院ごとの実態を的確に把握することが大切だ。

 一方で病床数の削減は、高齢者に多い慢性期患者の在宅医療への移行が前提となる。県の推計では、25年の在宅診療の患者数を13年比23%増の約2万3200人と見込む。県内では、在宅療養を支援する医療機関などが少ない。病床数を削減するのであれば、かかりつけ医や、24時間体制で訪問診療に対応する診療所の拡充など、地域の医療体制の整備を急ぐべきだ。

 患者が退院に向けて診療やリハビリを受けるための回復期病床は25年には不足する公算が大きい。病院ごとの病床再編を進めたい。

 病床数が過剰になると、必要のない入院や長期療養が増えて医療費がかさみやすくなるとの指摘がある。医療費が全国で年間41兆円に上る中で、医療費の抑制は欠かせない。しかし医療体制が隅々まで行き届いているとは言えない本県で病床の削減を急げば、地域内で入院できる病院がなくなる恐れがあるなど、医療サービスの地域格差が広がる可能性もある。

 25年には団塊の世代が75歳以上となり、高齢者人口がピークを迎える。県は医師会など関係団体と協議を深め、県民にとって最善の医療体制を構築すべきだ。