【10月22日付社説】吾妻山の規制解除/ 油断しないで急変に備えを

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  この厖大(ぼうだい)な山群には、渓谷あり、高原あり、湖沼あり、森林あり、しかも山麓をめぐってあちこちに温泉が湧いている。包含(ほうがん)するところの景勝は甚だ豊富であるが、それを極めつくすのは容易ではない―。

 小説家で登山家だった深田久弥は著書「日本百名山」で、本県と山形県にまたがる吾妻山を、そう評した。まさに吾妻山は、登って良し、風景を見て良し、温泉につかって良し―の三拍子がそろった本県を代表する山の一つである。

 その吾妻山について気象庁は、噴火の兆候が見られなくなったとして、噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から1(活火山であることに留意)に引き下げた。

 引き下げを受けて、福島市は火口周辺500メートルへの立ち入り規制を解除し、浄土平から一切経山への登山が一部コースを除いて可能になった。県も磐梯吾妻スカイラインの夜間通行止めを解いた。

 1への引き下げは約1年10カ月ぶり。折から紅葉が見頃であり、観光関係者らから歓迎の声が上がった。スカイラインはあとひと月足らずで冬の眠りにつくが、少しでも多くの観光客、登山者に吾妻山の秋を楽しんでもらいたい。

 警戒レベルは火山活動に応じて防災対応などを5段階で示す。吾妻山は小規模噴火の可能性があるとして2に引き上げられていた。気象庁によると吾妻山は今年5月以降、火山性地震は少ない状態で経過。大穴火口では地熱域の拡大は認められず、今月の現地調査でも特段の変化はなかったという。

 約2年前にレベル1で噴火した御嶽山(おんたけさん)の例をみても火山の噴火予知は難しい。しかし、原発事故と噴火レベル引き上げという二重の荷物を背負わざるを得なかった観光関係者の中には「安全最優先」を理解しつつも、もう少し早く引き下げの判断ができなかったかとの思いもある。

 気象庁は現在、全国の火山について、噴火警戒レベルの判定基準を精査し、公表する作業を進めている。基準を明確に示すことで、多くの人々に危機意識を共有してもらうとともに、レベルの引き上げや引き下げの判断をより迅速、的確にできるようにするためだ。

 気象庁によると、県内では、まずは吾妻山について本年度中の判定基準公表に向けて作業を進めている。続いて、安達太良山、磐梯山の判定基準の公表を目指す。

 吾妻山について気象庁は、大穴火口付近では熱活動が続いているため、突発的な噴出現象に今後も警戒するよう呼び掛けている。引き下げに油断せず、急変にいつでも対応できる体制を続けたい。