【10月27日付社説】震災記録施設/記憶と教訓、共有できる場に

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 本県にとって東日本大震災は、大地震と津波、原子力災害という世界で初めて経験した複合災害だ。アーカイブ拠点施設(震災記録施設)は県民も、国内外の人たちも、その記憶と教訓を共有できる場所でなければならない。

 施設の展示方法や、運営の在り方を定める基本構想の検討が進んでいる。県は、今月の検討会議で、県民が運営に参加してもらう方針を示した。

 語り部や運営スタッフとして活動したり、展示内容を考える企画会議に参加したりしてもらうことを想定している。

 施設は、双葉町中野地区に建設する。2020年の開館を目指す。県は今後4年間で、県民の意見を取り入れながら、ボランティアの組織化などを進める考えだ。組織化に当たっては、若者から、地域の歴史を知るお年寄りまで、幅広い県民が参加しやすい仕組みを整えるべきだ。

 広島市の平和記念公園では、被爆者が亡くなった後も、その孫が語り部を務めている。自らの体験を語り継ぎたい人と、若者が一緒に運営に携わることは、震災と原発事故が地域の暮らしや伝統などに与えた影響の大きさについて、正しく次世代に引き継ぐことに役立つはずだ。

 震災の被害は全県に及んだが、施設が造られる浜通りと、中通り、会津とではその影響の度合いが違う。それぞれの記憶を国内外の人に伝えるためには、全県的な県民の参加が求められる。

 そのためには、インターネットやテレビ会議システムなどを活用し、中通りや会津の人たちが居住する地域に居ながらにして、来館者に対し語り部として、被災から復興に歩む姿を伝えられるような仕組みも検討すべきだ。

 施設は双葉、浪江両町の避難指示解除準備区域に整備する復興祈念公園に隣接して建設される。未曽有の複合災害の記録や復興の現状を示す遺物などを展示するほか、防災や減災などを学ぶ研修機能も持たせる。

 震災の傷痕を形として残す震災遺産などに加えて、語り部や運営スタッフとして県民が来場者に直接体験を伝えることは、災害の脅威や防災の重要性を来場者の心に響かせることができるだろう。

 開館を予定する20年には、東京五輪・パラリンピックが開かれ、海外から多くの旅行者が訪れる。県は一刻も早く、学校や企業、各種団体に働きかけて運営に携わる県民を募り、本県の現状を正しく発信するための伝達能力の向上などに努めるべきだ。